日本では『楽聖』とも称されるルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン（1770-1827）。神聖ローマ帝国時代のボン(ドイツ）に生まれ、オーストリア帝国時代のウィーンに没しました。

祖父に始まり父ヨハンも宮廷歌手となりますが、ヨハンは酒におぼれ、一家の生活は困窮します。ルートヴィヒは父から音楽の才能を見出され、第２のモーツァルトを目指し厳しい音楽教育を受けます。度を越えた教育がその後の難聴の原因になったのではと言われています。16、17歳の頃から音楽家として一家の生活を支えました。

16歳でウィーンを旅した際、ルートヴィヒは敬愛するモーツァルトを訪ね、弟子入りを希望しますが、モーツァルトが早世したため、願いがかなうことはありませんでした。

1792年22歳の時ハイドンに弟子入りし、オーストリアのウィーンに移住、ボンを離れます。移住後のベートーヴェンの人生は、ピアノ即興演奏の名手として名声を博し、演奏作曲家としても地歩を築いていきますが、一方で持病の難聴に苦しめられ、苦悩の多い人生となっていきます。40歳の頃には完全に聴力を失い、全く耳が聞えない状態のまま、56歳で亡くなるまで、16年にわたり音楽活動を続けました。

ベートーヴェンの作曲スタイルは、楽譜を何度も書き直し、修正を重ねていくというものでした。スランプも多くモーツァルトのような天才肌というよりは、努力の人といえましょう。苦悩に溢れた人生を懸命に生きたベートーヴェンの音楽は、それだからこそ聴くものの感情を激しく揺さぶるのかもしれません。

ボンのベートーヴェン生誕の家「ベートーヴェンハウス」が、約半年の改装期間後、2019年9月にリニューアル・オープンしました。

直筆の楽譜や演奏した楽器など貴重な品々が展示はそのままに、今までの年表的な展示の仕方をやめ、人間ベートーヴェンを多角面から探る展示方法となりました。

展示物についての、日本語の詳細なパンフレットやオーディオガイドもありますので、個人で訪れても十分楽しむことができます。

《ウィーンに移住》
1792年22歳の時、当時第一人者だったヨーゼフ・ハイドンに入門します。ハイドン多忙のため、師弟関係は自然解消となりますが、ウィーン移住後、ピアノ即興演奏の名手として名声を博し、演奏作曲家としても地歩を築いていきます。ウィーン生活が軌道に乗ると、弟たちをウィーンに呼び寄せ、親代わりとなって世話をします。順調な音楽家人生の一方で、20歳代後半から持病の難聴が悪化、暗い影を落としていきます。人生に苦悩し、32歳のとき、ウィーン郊外のハイリゲンシュタットで「ハイリゲンシュタットの遺書」を記し、自殺を考えるものの苦難を乗り越える道を選択します。40歳の頃には完全に聴力を失い、全く耳が聞えない状態のまま、56歳で亡くなるまで、16年にわたり音楽活動を続けました。


★ベートーヴェン・パスクヴァラティハウス　※ウィーン：リンク周辺
建物の名「パスクヴァラティ」は、持ち主のパスクヴァラティ男爵の名前に由来しています。
パスクヴァラティ男爵はベートーヴェンのパトロンで、生涯に渡って友情関係を保ちました。転居の多かったベートーヴェンですが、この建物には1804年からの4年間と、1810年からの4年間、合計8年間ほど暮らしています。この家では、オペラ「フィデリオ」や交響曲第5番「運命」､「レオノーレ序曲第3番」、「ピアノ協奏曲第4番」、「エリーゼのために」など有名な曲が多数誕生しています。建物5階がベートーヴェン記念館になっており､ベートーヴェンが実際に使用したピアノ、直筆の楽譜や遺品などが展示されています｡

★ベートーヴェン・ミュージアム（ハイリゲンシュタット遺書の家）
ウィーン北部の19区ハイリゲンシュタットに現存するベートーヴェン・ハイリゲンシュタット遺書の家にあった40㎡の記念館が拡張され、2017年11月末に265㎡の大規模なベートーヴェン・ミュージアムが新オープンしました。1802年、32歳の時、この家でベートーヴェンは、弟たち宛てに「ハイリゲンシュタットの遺書」をしたためます。この手紙には、心の奥底にある多くの考えと次第に悪化していく難聴への絶望が記されていますが、結局この手紙は発送されませんでした。ベートーヴェン・ミュージアムでは大作曲家の人生と作品を、最新の研究レベルで紹介しています。展示品の中には初期の補聴器や「プロンプターボックス」（音波を強化するためのもの）などもあります。オーディオ・ステーションでは、ベートーヴェンの難聴を追体験できます。

★エロイカハウス　※見学には2週間前までに事前予約が必要です。
ベートーヴェン・ミュージアムから数キロ離れた場所に、ベートーヴェンが1803年から翌年にかけて過ごした家があり、内部の3室が展示室となっています。ベートーヴェンが交響曲第3番「英雄（エロイカ）」を書き上げた時に住んでいたことから、「エロイカハウス」の名がつけられました。交響曲第3番「英雄（エロイカ）」は、尊敬する英雄ナポレオンに捧げる予定で書かれ、「ボナパルト」というタイトルがつけられていましたが、皇帝となったナポレオンの独裁ぶりに憤慨し、献呈をとりやめたといわれています。

★ベートーヴェンの散歩道
ベートーヴェンが交響曲第6番「田園」を作曲した「ベートーヴェン夏の家」（一般公開はされていません）近くのシュライバー川という小川に沿って続いている道は「ベートーヴェンの散歩道」と呼ばれています。緑も多く、この道を歩きながら交響曲「田園」の構想を練ったといわれています。今でも当時の面影を残しており、散歩道の置くの広場にはベートーヴェンの胸像があります。

★グリーヒェンバイスル
1447年創業の老舗で、作曲家ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ワーグナーなどが訪れているレストラン。ベートーヴェンのサインが残されています。歴史あるお店で、本格的なウィーン料理を楽しめます。

2020年に限らず、毎年9月にボンでは『ベートーヴェン音楽祭』が開催され、世界中からのベートーヴェンファンで賑わっています。

日本では有名ではありませんが、人気の演目のチケットは前年末には売り切れるほどです。2020年にご都合がつかなければ、毎年開催されていますので、こちらをどうぞ♪

ボンからライン川沿いに北に30キロ、列車で20分でケルンに着きます。世界遺産のケルン大聖堂はその大きさに圧倒されます。市内には、西洋名画の宝庫のヴァルラーフ・リヒャルツ美術館や、近代アートのルートヴィヒ美術館があり、美術鑑賞も楽しい町です。

または、ケルンから列車で35分のアーヘンにも足を伸ばしてみては？フランク王国の都にして、神聖ローマ帝国の30人もの皇帝の戴冠式が行われた大聖堂は一見の価値があります。

ライン川沿いの街ボン。コンサート鑑賞後はライン川クルーズもおすすめです。

ボンからも乗車も出来ますが、ライン川クルーズのハイライトは、ライン川を南に遡った、ラインの真珠とも呼ばれる可愛らしいワインの町リューデスハイムからローレライ伝説の残るザンクトゴアルスハウゼンです。乗船時間は2時間弱です。季節の良い春から秋をおすすめします。

ブランドロゴ（BTHVN2020）を詳しく説明しますね。

B: ベートーヴェンは、1770年12月16日にボンの現在の記念館「ベートーヴェンハウス」で誕生し、22歳でウィーンに発つまでボンに暮らしました。250周年記念祭期間中は、お祭りやイルミネーション、若者たちを対象としたプロジェクトなど沢山の行事が開催されます。

T: ベートーヴェンの音楽の革新への衝動、そして妥協を許さない人柄から、音楽史の鍵となる数多くの作品が誕生しました。それらの作品や現代の音楽家にも影響を与え続けている作品が記念祭の中心になりますが、ベートーヴェンの作曲した340作品がイベント期間中に出来る限り演奏される予定です。国際的な舞台で活躍する音楽家のコンサートを始め、ジャズ、ロック、ポップ音楽とベートーヴェン作品のコラボレーションなどが催されます。

H: ベートーヴェンは、フランス革命のスローガンである自由、平等・友愛を熱烈に支持していました。理想的な社会の実現目指して、音楽を通じてヒューマニストの使命を果たそうとしていました。

V: ベートーヴェンは音楽の夢想家と言われてます。当時の規範を壊し、新たな基準を創りました。記念祭では、未来に向けて国境を越えたプロジェクト、ドイツのボンからオーストリア・ウィーンやベートーヴェンゆかりの地でのフェスティバルを計画。ビジュアルを用いた音楽なども予定しています。

N: ベートーヴェンは自然を愛しました。1808年にウィーンで作曲した「交響曲第六番田園」は、代表作の一つ。自然は彼が癒され、インスピレーションの源泉となった場所。10代の頃から、ボン近郊の田舎への旅を楽しみ、田舎生活への憧れが常にあったと言われています。ウィーンに転居後は、毎年夏に近郊の田舎町メードリンク（Mödling）やハイリゲンシュタット（Heiligenstadt）やバーデン（Baden）で過ごしました。

ベートーヴェン生誕250年祭は、2016年にベートーヴェン記念祭委員会（Die Beethoven Jubiläums GmbH）が設置され、準備してきた記念祭です。

ベートーヴェン生誕250年祭の 公式サイト内のこちらのページ（英語）ではすべてのプログラムを検索できます。

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