メルヘン街道
ドイツには日本と同様、その地に伝わる物語や伝説が多く残ります。1812年、グリム兄弟は民間伝承を集めて童話集を出版しました。グリム童話ゆかりの地が点在するメルヘン街道。兄弟の生まれ故郷ハーナウから北ドイツのブレーメンまで続く約600kmの街道です。カッセルやハノーファー、ブレーメンなどの都市に泊まり、物語ゆかりの小さな町へ日帰り電車旅はいかがでしょうか。
グリム兄弟の生涯
グリム兄弟の生涯を辿って~ゆかりの地巡り~
◎兄弟が生まれた町『ハーナウ』
長男のヤーコプは1785年、次男のヴィルヘルムは1786年にハーナウで生まれました。兄弟は全部で9人でしたが、3人が若くして亡くなったため6人兄弟でした。兄弟の一番下の弟ルートヴィヒ・エーミール・グリムは有名な画家でグリム童話の挿絵も描いています。
◎幼年期を過ごした『シュタイナウ』
父の仕事の関係で一家はシュタイナウに移り、グリム兄弟は幼年時代をシュタイナウで過ごします。1796年に父が亡くなったことで家族は生活に困窮し、カッセルに住む母親の姉に引き取られました。
◎大学時代を過ごした町『マールブルク』
カッセルにて優秀な成績で学校を卒業した二人はマールブルク大学で法律を学びます。そこで交流した文学者に影響を受け、古典文学や詩に興味を持つようになります。「民衆詩集」の刊行に協力したことがきっかけでその後も独自に昔話を収集していきます。
◎童話の初版本を出版『カッセル』
マールブルク大学卒業後、カッセルへ。二人は1812年に「こどもと家庭の童話」を出版。3年後に第2巻を刊行します。ヤーコプが1819年に出版した「ドイツ語文法」は高い評価を受けます。
◎大学で教鞭を執る『ゲッティンゲン』
ゲッティンゲン大学に招聘され、大学で教える傍ら研究書を出版。ハノーファー国王のある事件を機に追放され、カッセルへ戻ることになります。
◎グリム兄弟が眠る町『ベルリン』
プロイセン国王からベルリンへ招かれ、ベルリン大学で講義をしつつ、ドイツ語辞典の編纂に取り組む。Aから始まる辞典の「D]の途中で弟のヴィルヘルムが、「F]の途中で兄のヤーコプが亡くなり、その後多くの学者に引き継がれて、およそ100年の歳月を経て1961年にようやく完成しました。グリム兄弟は、ベルリンのマテーイ教会墓地に眠っています。
グリム童話の舞台になった町をご紹介
◎ブレーメンの音楽隊の町『ブレーメン』
「ブレーメンの音楽隊」で有名なブレーメン市内ではあちこちでロバ、犬、猫、ニワトリのモチーフに出会えます。
◎赤ずきんの故郷『アルスフェルト』
木組みの建物が有名な街です。2本の塔を持つ市庁舎は1516年に建てられました。小さいながら中世の面影を残す美しい街です。広場の隅のワインハウス裏の噴水に赤い帽子を載せた少女の像があり、本来は「ガチョウ番の娘」の像なのですが、「赤ずきんの噴水」と呼ばれています。
◎白雪姫の村『バート・ヴィルドゥンゲン』
白雪姫のモデルと言われるマルガレータ姫が存在した村。「白雪姫の家(白雪姫博物館)」があります。のどかな風景に「白雪姫と7人のこびと像」が建てられています。
◎おおかみと七匹の子ヤギの舞台『ヴォルフスハーゲン』
メルヘンの泉には、おおかみと子ヤギたちの銅像があります。木組みの家々や石畳の小道はまさにメルヘンの世界!
◎ “鉄ひげ博士”が活躍した木組みの町『ハン・ミュンデン』
ハン・ミュンデンは、3つの川が合流する町で、交通の要所として中世から栄えていました。がっしりとした木組みの家が700軒以上保存された街並みは必見です。マルクト広場の市庁舎では、仕掛け時計が毎日12時、15時、17時に「私はドクターアイゼンバールト」のメロディーを奏でます。歯科治療をする鉄ひげ博士を是非ご覧ください。
◎ “がちょう姫リーゼル” の町『ゲッティンゲン』
ハイデルベルク、テュービンゲン、マールブルクと共にドイツの四大大学都市のひとつとして有名なゲッティンゲン。グリム兄弟も教鞭を取りました。旧市庁舎前の噴水には「がちょう姫リーゼル」の像が立っています。
『ハーメルンの笛吹き男の野外劇』と『赤ずきんのパレード』
◎「ハーメルンの笛吹き男」で知られるハーメルン♪
夏季限定5~9月の毎週日曜日に「ハーメルンの笛吹き男」の野外劇、毎週水曜日にミュージカル「Rats(ラッツ)」が上演されます。どちらも予約不要で鑑賞は無料!大人気イベントですので、ちょっと早めに場所取りした方がよいかもしれません。是非、タイミングを合わせて、ハーメルンにお越しください。
◆「ハーメルンの笛吹き男の野外劇」
5月中旬~9月中旬の毎週日曜日12:00正午〜 「結婚式の家」のテラスにて行われます。(予約不要、無料、約30分間)
◆ミュージカル「Rats(ラッツ)」
5月下旬~9月初旬の毎週水曜日16:30〜 「結婚式の家」のテラスにて行われます。(予約不要、無料、約45分間)
◎赤ずきんのパレード♪ ザラートキルメス
毎年6月にシュヴァルムシュタットのお祭り『ザラートキルメス』がツィーゲンハインで開催されます。「ザラート」とはドイツ語で「サラダ」のこと。お祭りの起源は1728年、じゃがいもとサラダ菜の収穫を祝ったのが始まりです。この日は、赤、緑、黒、紫の小さなお椀のような帽子を被り、民族衣装に身を包んだ人々が伝統的なパレードに参加します♪
ラプンツェルの舞台となった古城ホテル『トレンデルブルク城』
ディズニーアニメで一躍有名になった『ラプンツェル』のモデルになった古城ホテルに宿泊します。中世の雰囲気をそのまま残す古城は、物語のイメージが広がります。
グリム兄弟が暮らし、多くの民話を集めた街カッセルから北に30キロ。メルヘン街道のちょうど真ん中くらいに位置する14世紀築城のトレンデルブルク城は、グリム童話「塔の上のラプンツェル」の舞台となった城。現在は、ブルクホテル・トレンデルブルクとして営業しています。
城には現在も高さ40メートルの塔があり、ラプンツェルが金色に輝く長い髪を塔の上から垂らし、恋人を塔に登らせたというお話があります。
※「いばら姫(眠れる森の美女)」のお城(ザバブルク城)は、2024年11月現在、修復工事中です。
魔女伝説のハルツ地方
ドイツのほぼ中央に位置するハルツ山地。このブロッケン山はゲーテの「ファウスト」でも、魔女がヴァルプルギスの夜(4月30日の日没から5月1日の未明)という春を迎える祭りを開いていた場所として登場しています。古い木組みの家並みが美しいヴェルニゲローデから、ハルツ登山鉄道のSL列車でブロッケン山を訪れてみませんか?
ハルツ山地を走るSL機関車『ハルツ狭軌鉄道』
《ハルツ狭軌(ナローゲージ)鉄道🚂ブロッケン線》
ドイツ各地でレトロな蒸気機関車が観光客や地元の人々の足として今でも現役で活躍していますが、なかでもドイツ人に愛されているのが、ブロッケン山の山頂まで上り詰めるハルツ狭軌鉄道ブロッケン線の本格的な蒸気機関車です。
ハルツ狭軌鉄道は、かつて旧東西ドイツの国境地帯であったハルツ山地を走ります。旧東ドイツに属していたブロッケン山の山頂付近には軍事施設が設けられたことから、一般人の立ち入りが厳しく制限されました。豊かな自然が開発を逃れたため、深く濃い森を心行くまで味わうことができます。
ハルツ狭軌鉄道の旅は、標高234メートルのヴェルニゲローデ駅から標高1125メートルのブロッケン山の山頂まで約34キロ、ハルツの森を駆け抜ける約2時間ほどの旅です。開放的なデッキで雄大な景色を楽しむのがおすすめです。
《ブロッケン山》
ブロッケン山は1年のうち、約100日は霧に覆われています。そのため古くから「神秘の山」と言われてきました。「ブロッケン現象」という不思議な自然現象にその名が使われています。
ゲーテの戯曲「ファウスト」では「ヴァルプルギスの夜(4月30日の夜)」にドイツ中の魔女が集まって宴会を開く場所として描かれています。現在でも4月30日は周辺の町で魔女祭りが開かれ、魔女姿の人たちが機関車に乗ってブロッケン山へ向かう姿も見られます。
ハルツ地方の町のお土産屋さんに魔女人形が売られているのはそのためです。ちょっと怖い雰囲気の魔女人形ですが、幸運を運ぶお守りとして親しまれています。
《ヴェルニゲローデ》
ハルツ地方の街は、木組みの家々が並ぶ美しい街並みが印象的です。
ブロッケン線の起点駅であるヴェルニゲローデは木組みの家が多く並ぶ美しい街です。旧市街の石畳のマルクト広場に面したカフェのテラス席でゆったりとクーヘン&コーヒーを楽しんでみてください。
ハンブルクの「ミニチュアワンダーランド」
写真:©Miniatur Wunderland Hamburg Official HP
ハンブルクの『ミニチュア・ワンダーランド』は「世界最大の鉄道模型レイアウト」が有名で、世界中の鉄道ファン、ジオラマファンが集まります。年間100万人を超える入館者がある大人気のテーマパークです。
2001年にオープンした「ミニチュア・ワンダーランド」。世界中の風景・情景を1/87スケールで再現しているジオラマテーマパーク、そして世界最大の鉄道模型のテーマパークとして、世界中の観光客を魅了してやみません。大人気ですので、訪れる場合には入場予約をおすすめいたします!
町なかを走るSL機関車『モリー』
写真©Dampfbahn Molli official website
北ドイツのヴィスマールとロストックの間にあるバート・ドーベラン(Bad Doberan)。ここはSL機関車、愛称「モリー」が走る町として知られています。モリーは2007年にサミットが開催されたバルト海沿いの保養地「ハイリゲンダム」も通ります。終点は「キュールングスボルン」。片道45分ほどのSLの旅です。キュールングスボルンには東駅と西駅があり、終点の西駅には構内に鉄道ミニ博物館があります。東駅は、より賑やかでレストランやショップが並んでいます。
バート・ドーベランの町なかを抜けた後、モリーは田園風景を横目にモクモクと黒煙を上げながら走って行きます。5月頃には、モリーが辺り一面真っ黄色の菜の花畑の中を走り抜けていきます。そんな季節に訪れてみたいですね。