2016 UTMB参戦記その4 奥村様 いよいよスタート!!


 【~start】
 8月26日(金)午前3時頃目が覚めた。試合前の緊張感もあり完全に熟睡できない自分がいた。これから二晩不眠不休で臨む前日だから寝なくてはいけない。そう思うと逆に眠れなくなる。そうこう考えているうちに浅い眠りについた。次に目覚めたのは午前5時過ぎだ。これ以上寝ることはできないので、早めの朝食を摂ることにした。Mr.Decoも起きてきた。アラフィフは皆早起きだなとお互い談笑しながら朝食を摂った。朝食を摂ったら気分が落ち着きまた床に就いて2時間くらいうとうとと寝ることができた。



昼前に起きて昼ご飯にカレーライスと味噌汁を食べた。妙な取り合わせだが食べなれた味で落ち着くことができた。1Fに下りるとSEKAINO.Doi(2015UTMB:12位 日本人1位)がジャグジーからあがってリラックスしていた。
僕も“景峻”を望みながらゆったりとジャグジーに浸かった。2Fに上がるとMr.Decoはバルコニーでけん玉の練習をしていた。トレイルにプラスとは思えないがこれも彼なりのリラックス方法なのだろう。
 
僕はほんの少し床に就いて身体を休めることにした。知らずに小一時間眠りにつくことができた。後で考えると、この睡眠は大きかったように思える。13 :40頃Courmayeurに置くデポジットバックを預けに行くためにFOE.Azumiが送迎にきた。我々はバックを預けに送迎してもらった。15時、スタート3時間前である。TD.NinoがUTMB組にテーピングを促してくれるということなので、大臀部から腰部にかけてしっかりとテーピングをしてもらった。驚くことに身体の前屈と階段の上り下りが楽になった。さすがスポーツ整形外科医はゴッドハンドを持っていた。荷物を総点検しザックに詰めて“タカトラ”のバイクジャージに袖を通しスタートの恰好は整った。
 
 

16:10 頃FOE.Azumiがワンボックスで迎えにきてくれた。第一陣として、Team Choki:Mr.Takeuchi、 Mr.Uenoと僕の3人でスタート地点に向かった。16:30頃、スタート1時間30分前、スタートゲートには多くのランナーが続々と集まってきていた。一般ランナーの3列目の好位置に陣取り座りながら待つことにした。周りでは各国の言語が飛び交っている。国際レースが迫っていることが実感でき気持ちは高まる。17時をまわるとMCのアナウンスに合わせて各国を代表するエリートランナーが紹介され、一般ランナー前のエリートランナーエリアに次々入ってくる。すごい光景だ!! 雑誌とかNetでしか見たことのない世界的なランナー達がすぐ近くにいる。
気持ちは益々高揚する。そんな頃、パスポートの切り替えミスで本日入国したゼビオMr.Itoが柵の向こうから手を振ってきた。時差ボケもあり眠いのに大変だろうなと思いつつ、並ぶ場所がないようだったので、手招きして我々の所に落ち着いてもらった。スタート30分前、ほとんどのランナーはスタンバイ完了だ!! MCはさらに会場の選手とギャラリー達を鼓舞する。美しい女性ダンサーがスタートゲートで舞を踊る。僕は“シガウマラ”日本国旗を大きく振り日本と自分の居場所をアピールする。各国の旗がたなびく。日本国旗も一生懸命はためかす。スタート10分前、会場を盛り上げる音楽とMCのトークが最高潮になる。選手たちも応える。と同時に少し静寂になる。ついにカウントダウンだ。10,9,8,7,6,5,4,3,2,1とフランス語でカウントダウンが始まった。ランナー達も声をだすが僕はフランス語が解らず適当に合わせた。18時スタートの号砲と共に2,555人のランナーが一斉にスタートした。
 


【Chamonix0.0km ~ Les Contamines 30.7km】


エリートランナー達が4min/kmを切るスピードでスタートしていく中、僕は日本国旗を天高く掲げながら、観客応援にこたえつつゆっくりと足を進めた。
マラソンとは実に不思議なスポーツだ。たった一発の号砲で何千人、何万人のランナーが遥か彼方のゴールを目指す。どんなに苦しくても辛くても痛くても、時には人の静止を振り払ってでもゴールを目指す。通常、何万人もの人を何10km先に移動させるのは至難の業だ。それをたった一発の号砲で皆が同じ方向を向いて誰からも促されることなく、黙々とゴールを目指す。ある意味人間行動の異様な光景かもしれない。
 
 スタートしてしばらくは石畳のChamonix(標高1,035m)の街を進む。沿道や建屋の窓から大声援のシャワーを浴び何とも言えない心地良さだ。そんな中、あのイグマル大阪弁がフランス語を劈いた。「おくむらさ~ん 頑張ってぇ~ !!」軽く後ろを振り向き日本国旗をはためかし応える。やっぱ関西弁は和むなぁと感じつつスタートの余韻を味わう。やがて街を抜け長閑な田舎道に入る。午後6時をまわっているとはいえ、日差しはきつく暑い。観客は少なくなってきたが熱い応援は延々と続く。持っている国旗が重いので道端で折りたたんでザックにしまう。2km程の平坦なロードが終わるとほぼ平坦なトレイル道に入る。森林の木陰で気持ちがいい。実はスタート90分前からトイレに行ってなかったので、キャンプ場みたいなところのトイレに入ってすっきりさせた。いよいよ自分の中でのスタートができた感じだ。
 
 まだまだ序盤、最初のAS(エイドステーション)であるLes Houches(仏:レズーシュ7.9km地点:標高1,008m)までは7min/km程度でゆっくりと進む。このスピードだと次々にパスされる。まあ、準備運動のつもりで気にせず身体をほぐし景色を眺めながら進む。時折、森林の隙間から“景峻”を望める。8月26日(金)18時55分(55分)Les Houches到着し軽く水分補給してすぐにASをでる。ここから暫くは舗装の車道の登りだ。普段であれば走って登るがあえて歩いて登る。やがて舗装路からスキー場のゲレンデに入る。ここからはスキー場の林道を登る。ここも平坦なところはジョグで進み基本的にはストックを突いてパワーウォークで登る。登りになると一気に周りのペースが落ちてくる。UTMBのDVDではキリアン選手が余裕で駆け登っていた林道だ。この登りを余裕で走るのか? 自分が同じ場所に立った時、彼の走力と偉大さを痛感した。林道前半で同い年のMr.Yokoiと出会った。まだまだ前半で元気そうだ。お互いの完走を誓い合い僕は前にでた。淡々と登り息を切らさない程度に牛歩のごとく進む。
 
やがてほぼ山頂のLe Delevret(仏:デレブレ13.8km地点:標高1,764m)20時01分(1,157位:2時間00分45秒)を通過した。疲労は全くない。むしろ身体がほぐれて動き出してきた感じだ。ここからは林道の結構な急斜面の下りである。いつもの国内レースと同じく登りで抜いた分だけ抜かされる。まったく気にせず大腿四頭筋を温存するために極めて小走りにちょこちょこ下る。ちょこちょこ下っているとMr.Decoがウェラブルビデオカメラを片手に軽やかに抜かしていった。「ちょっと遅すぎるんちゃう。もう少しスピード上げた方がええよ」と声をかけられた。しかし、前半の30kmくらいまではゆっくりすぎるくらいゆっくり行こうと決めていたので、「そうですね」と返事するも心の中では「このペース、このペース」と言い聞かせ、遅いペースを維持した。下りも半ばを過ぎるとすっかり日が暮れてきたので、ヘッドライトを装着し一晩目の夜間ステージに突入した。暗闇の中から街の明かりが見え隠れした。ASが近いのがわかる。お腹も少しすいていたので到着が待ち遠しい。
 
Saint Gervais(仏:サンジェルベ21.0km地点:標高818m UTMB最低地点)20時59分(1,201位:2時間58分14秒)に到着した。21時だというのに街はお祭りのように盛り上がっていた。色々の楽器が奏でられ、音楽に合わせて人々が踊る。なんておおらかなフランス人。こちらまで楽しい気分になる。ここのASは食べ物が充実している。今後の栄養補給のために自分に何が合うか一通りつまんでみた。チーズとフランスパンは合わない。チーズの臭いとフランスパンのパサパサさが補給するのには向いていない。フランス人はこれらをバクバク食べていた。やはり主食が違うのか。パスタ入りコンソメスープ、フルーツ(オレンジ、レモン)、板チョコ、ドライフルーツ入りエナジーバー、サラミ、ビスケットは美味しかった。10分程度補給しボトルのドリンクを満タンにしてASをでた。暫くするとだらだら登りが続く。通常のレースなら余裕で走れる斜度だが、今回はジョグとウォークを織り交ぜながら進む。経験上、走り続けるまたは歩き続けることは、同じ筋肉を使い続けるので疲労するのが早い。故に、走り方に変化を持たせながら進むのが結果として疲れにくい。淡々と10km程ゆったりと登り続けると次のASの灯が見えた。

その5へ続く
 


Staff Comment
 いよいよ 奥村さんのUTMBが始まりました!
これからどんな景色が、苦難が待っているのでしょうか?
ワクワクしますね!






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