繊維産業が盛んで、石炭や鉄などの資源が豊富だったベルギーでは、1830年代に大陸初（イギリスに次いで2番目）の産業革命が起こりました。工業化が進み、大量生産が可能になると、様々な製品が安く手に入るようになります。産業革命は人々の生活を豊かにしましたが、その一方で、安価で粗悪な製品を氾濫させ、人々の生活から芸術性を失わせていきました。

そんな時代に、「生活に芸術性を取り戻そう！」というコンセプトのもと生まれたのが、アールヌーボー（＝新芸術）という芸術様式でした。このアールヌーボー（アールヌーヴォー）を初めて建築に取り入れたのが、ヴィクトール・オルタというベルギー・ゲント出身の建築家で、ベルギーはアールヌーボー（アールヌーヴォー）建築発祥の地です。

アールヌーボー（アールヌーヴォー）建築の特徴といえば、鉄と大きなガラスを使用していること、そして、植物モチーフと有機的な曲線を多用していること。美しいデザインにうっとりせずにはいられません。

ヴィクトール・オルタは多くのアールヌーボー（アールヌーヴォー）建築を手がけましたが、その中でも特に素晴らしい4つの邸宅は、「建築家ヴィクトル・オルタの主な都市邸宅群」として世界遺産に登録されています。この他にも、ベルギーには約500軒ものアールヌーボー（アールヌーヴォー）建築物が残っていて、随所にアールヌーボー（アールヌーヴォー）の欠片を見つけることができます。

2001年よりブリュッセルでは、2年に1度のイベント「アールヌーボー・ビエンナーレ」にて、普段は見ることができないアールヌーボー（アールヌーヴォー）建築＆アールデコ建築が、特別に一般公開されています。
2017年からは「アールヌーボー＆アールデコ・フェスティバル」に名前を変えて、毎年春に開催となりました！
毎回世界各国からアールヌーボー（アールヌーヴォー）、アールデコのファンが集う、大変賑やかなイベントです。

ブリュッセルから電車で約１時間、フランスとの国境沿いにあるトゥルネーは、“ベルギー最古の町”と言われています。
小さな町ですが、世界遺産が２つあります！
1188年に建設されたベルギー最古の鐘楼と、鐘楼の横にあるノートルダム大聖堂。
12～13世紀に建てられたノートルダム大聖堂は、西ヨーロッパのロマネスクを代表するとても美しい外観です。内部には、ルーベンスなどの傑作のほか、バラ窓（ステンドグラス）は息を飲む美しさ。おもわず魅入ってしまう事でしょう。
また、トゥルネー美術館はヴィクトール・オルタ設計によるアールヌーボー（アールヌーヴォー）様式。美術館内部では、オルタの設計図が展示されています。

ブリュッセルから電車で1時間弱、オランダとの国境までわずか30Kmのベルギー北部に位置する町アントワープ。
日本でよく知られるのは、やはり『フランダースの犬』でしょうか。感動的なラストシーンで登場する“ルーベンスの祭壇画”は、アントワープのノートルダム大聖堂に飾られています。
また、アントワープはファッションの町としても知られ、モード博物館や流行のファッションストアなど、若者にも人気です。
国の重要文化財にもなっている“オシレイ（オジレイ）通り”は、アールヌーボー（アールヌーヴォー）やアールデコ様式の建築が建ち並びます。20世紀初頭、お金持ち階層たちが“それまでに存在しないような建物”を競い合って建てたことで、そのユニークな家並みはつくられました。ゆっくりと散策してみてはいかがでしょうか。