チェコスロヴァキアとしての記憶が残るスロヴァキア共和国は、1993年に独立しました。古き良きヨーロッパの雰囲気が残る小国です。国土は小さいですが、山岳リゾートとして、周辺のヨーロッパの国々から観光客が押し寄せます。人口約541万人。8割がスロヴァキア人ですが、ハンガリー人も1割を占めます。公用語はスロヴァキア語です。通貨は「ユーロ」を採用。観光の場合、90日以内の滞在ならビザは必要ありません。パスポートの残存有効期間は出国時3ヶ月以上が必要です。はっきりとした四季があり、山岳地帯は特に寒くなります。タトリ山地では、平均気温が3℃です。戴冠式フェスティバルは、中世の戴冠式の様子を再現するイベントです。中世の雰囲気にどっぷり浸りたい方にお勧めです。世界遺産バンスカー・シュティアヴニツァでは、サラマンダー（トカゲ）祭りが開催されます。トカゲが金と銀の鉱山を教えてくれたという伝説に由来しています。ワインの産地なので、ぜひヴィナーレニュ（ワインハウス）で飲んでみてください。スロヴァキア名物のハルシュキは、ワインにピッタリ！羊のチーズソースがスロヴァキアならでは。

スロヴァキアの首都ブラチスラヴァ。約42万人が暮らしています。ウィーンとは車で1時間くらいの距離です。オーストリアとの歴史的な繋がりは深く、ハプスブルク家がハンガリー王国を統治した際には、ブラチスラヴァに首都が置かれました。1563年～1830年の間は、聖マルティン教会でハンガリー王の戴冠式が行われました。戴冠式フェスティバルは、その名残といえます。ブラチスラヴァ城は、かつてハプスブルクの女帝マリア・テレジアの居城でした。城内の一部は、国立歴史博物館として公開されています。旧市街の城壁の門のうち、唯一現存するミハイル門。塔の部分は武器博物館にもなっています。門の上からは旧市街を一望できます。国内最大の町ですが、近郊には農地が広がり、ワインの産地としても有名です。ぜひお土産に1本買っていきたいところ。ブラチスラヴァ特有のお菓子ロフリークもぜひお試しください。日帰りできる距離に、ナポレオンに攻め落とされたデヴィーン城もあります。

15世紀半ばにはハンガリー王国の最も重要な鉱山都市だったバンスカー・シュティアヴニツァ。最盛期には1年間に金600kgと、銀2万4000kg以上を産出していました。「バンスカー・シュティアヴニツァ歴史都市と近隣の工業建築群」として世界遺産に登録されています。街中にはカラフルな壁の家が建ち並び、男らしい鉱山のイメージとは真逆の可憐な雰囲気です。13世紀初頭のロマネスク様式の建物である旧城と、国内での戦争に関する展示がある新城の2つの城があります。ヘルメットにコート姿で暗い坑道を見学する、この土地ならではの坑道跡見学もあります。

ポーランドとの国境にまたがるスロヴァキアの代名詞タトリ山地。高い山々が連なり、四季折々の自然の魅力に溢れています。その中でも、「高いタトリ」を意味するヴィソケー・タトリは、ヨーロッパで大人気のリゾートとなっています。夏のハイキングはもちろん、春は高山植物が咲き乱れ、秋の紅葉、冬のスキーと楽しみが尽きません。ポプラド・タトリからタトリ電気鉄道で山間に登ることができます。タトリ電気鉄道は、主要な場所を繋いでいます。さらに山頂に向かうには、スタリー・スモコヴェツからのケーブルカーや、タトランスカー・ロムニツァからのロープウェイがあります。夏場は大変混み合うので、注意してください。天気が良ければ、スイスにも引けをとらない素晴らしい絶景が広がります。タトリ電気鉄道の西端シュトゥルブスケー・プレソには美しい湖もあります。ポプラド・タトリの南40kmには、世界遺産「スロヴァキア・カルストの洞窟群」の1つであるドブシンスカ氷穴もあります。夏の一時のみ一般公開されています。

スロヴァキア最大の見どころスピシュ城。広々とした草原の小高い丘の上に凛とそそり立つ姿は特別なものを感じさせます。かつては中欧最大級の城として、タタール人（モンゴル人）の襲来に備えた頑強な城でしたが、1780年の火災で焼け落ち、現在のような廃墟と化してしまいました。ただ、廃墟となったスピシュ城はむしろ景観に溶け込み、素晴らしい絶景となっています。スピシュ城の拠点は、城下町のスピシュスケー・ポドフラディエです。近郊にあるレヴォチャは、ハンガリー王がモンゴル軍の防御線として建設したのが始まりです。残っている城壁の一部がそれを物語ります。旧市街には、世界最高のゴシック様式の祭壇をもつ聖ヤコブ教会や、独特な外観の旧市庁舎など、見応えのある見どころが多くあります。「レヴォチャ歴史地区、スピシュ城およびその関連する文化財」として、世界遺産に登録されています。

ポーランドとの国境近く、プレショフからも近いバルデヨフは、古くからポーランドとハンガリーを結ぶ交易都市として栄えました。14世紀にできた城壁と砦が残された町として有名です。ラドニツネー広場を取り囲むように可愛らしい家々が並ぶ旧市街は、「バルデヨフ市街保護区」として世界遺産に登録されています。近郊には、木造教会が点在しています。そのうち8つの木造教会が「カルパチア山地のスロヴァキア地域の木造教会群」として世界遺産に登録されています。その中の聖フランシス・アシス教会は、木の壁一面に描かれた聖画が素晴らしいです。また、バルデヨフは昔から温泉療養地としても有名です。源泉は旧市街から約6kmのところにあり、全体が公園として整備されています。