ドラキュラ発祥の国というイメージが強いルーマニア。実は、ドラキュラのモデルとなったワラキア公ヴラド・ツェペシュは、侵攻するオスマン朝に果敢に戦いを挑んだ国民の英雄です。人口約1994万人。8割がルーマニア人ですが、ハンガリー人も一定数存在します。トランシルヴァニアにはハンガリー人が多数派を占める村が少なくありません。公用語もルーマニア語ですが、それらの村ではマジャル語（ハンガリー語）が使われています。ルーマニア人の多くはルーマニア正教です。通貨は「レイ」です。観光の場合、90日以内の滞在ならビザは必要ありません。パスポートの残存有効期間は入国時6ヶ月以上が必要です。国土の中央にあるカルパチア山脈を境に、山岳部と平原部では気候が大きく異なります。山岳部は雪がよく降ります。面白いイベントとしては「プリスロップ祭り」があります。トランシルバニア地方、マラムレシュ地方、モルダビア地方の境界のプリスロップ峠にあるボルシャ村で行われるお祭りです。 伝統的な民族衣装をまとって踊ります。ルーマニア料理はなんといっても種類豊富な肉料理。副菜はトウモロコシの粉を蒸した伝統的なママリガを。ぜひルーマニア産ワインと一緒にどうぞ。また、ルーマニアはハチミツも有名です。お土産にももってこい！鮮やかな模様のホレズ焼きは定番のお土産です。

ルーマニアの首都ブカレスト。人口約188万人。凱旋門があり、20世紀初頭には「バルカンの小パリ」と謳われるほどでしたが、第2次世界大戦後の共産主義時代の計画的な街づくりの結果、無機質な町となりました。独裁で有名だった故チャウシェスク大統領が建てた巨大な国民の館が、かつてを物語っています。約1500億円を投じて造られたこの宮殿は、内部も贅を限りを尽くしたものとなっています。ゲンチェア墓地には、チャウシェスク夫妻の墓もあります。クレツレスク教会の入口の天井には、18世紀に描かれたフレスコ画を見ることができます。外観も美しいスタヴロポレオス教会の内部のイコンは必見です。3つのドームが目印の大主教教会もあります。国立農村博物館は国内各地から297棟が集められた野外博物館。フォークロアの魅力溢れるルーマニアが堪能できます。お土産の露店もありお勧めです。近郊には、ルーマニアの前身ワラキア公国の首都だったトゥルゴヴィシュテや、スナゴウ湖の中央に建つスナゴウ修道院もあります。ここにはドラキュラのモデルであるヴラド・ツェペシュの首のない遺体が埋葬されているといわれています。

カルパチア山脈に三方を囲まれた、「森の彼方の国」という意味のトランシルヴァニア。鬱蒼と広がる森の中には、たくさんの見どころが点在しています。ルーマニアを訪れたら、この地方の観光は外せないでしょう。「カルパチアの真珠」の愛称で知られるシナイア。フレスコ画が素晴らしいシナイア僧院、ドイツ・ルネッサンス様式のペレシュ城、同じくペリショール城などが見どころです。中世の街並みを残すブラショフは、ドラキュラゆかりのブラン城への起点です。非常に個性的な外観のプレデアル僧院、この地方で最も美しいといわれるクルテア・デ・アルジェシュ修道院も近くです。ヴラド・ツェペシュが建設したポエナリ城もあります。串刺しにされた人形が生々しいです。南トランシルヴァニア地方の小さな村々には、見張り台の役割も果たした「要塞教会」が多数あり、世界遺産となっています。この地方の中心にあるシギショアラの歴史地区もまた世界遺産になっています。中世の雰囲気を色濃く残す町は、歩くだけでも楽しいです。可愛い雑貨もいっぱいあります。シビウもまたそんな町です。さらに西へ進むと、ドラキュラの撮影にたびたび使われてきたフネドアラ城があります。ブラン城やフネドアラ城では、ハロウィンパーティも開催されています。クルージ・ナポカの周辺には、ハンガリー系の村々があり、独特の文化を大事にしています。男性の麦藁帽子が特徴的なシィクなど、小さな村ですが興味深いです。イースターやクリスマスシーズンがお勧めです。

ここにも近代化は迫っているものの、マラムレシュの奥深くの小さな村の人々は、民族衣装をまとい、牧畜業を営んでいます。まるで時間が止まってしまったかのように、マラムレシュにはルーマニアの原風景が残っています。独特の民族舞踊や音楽をとても大事にしています。マラムレシュ地方の県庁所在地とでもいうべきバヤ・マレ。世界遺産のスルデシュティとプロピシの教会へのアクセスが良いです。シィゲトゥ・マルマツィエイは、マラムレシュ地方の中心地。現代文明と伝統が混在した町です。クリスマスの時期には、村人が各村の民族衣装を着て歌ったり、踊ったりしながら町を練り歩く大規模なパレードが開催されます。シイゲトゥ周辺には本当に多くの世界遺産の木造教会があります。シィゲトゥを拠点に巡ってみましょう。有名なサプンツァ村の「陽気な墓」も近いです。村人の一人が故人の生前の職業や生活を、墓標にユーモラスにデザインしたのが始まりだそうです。また、ウクライナとの国境近くの町ヴィシェウ・デ・ススには、ヨーロッパ最後の軽便森林鉄道が走っています。ヴァセル渓谷森林鉄道は薪のSLで、観光客に大人気となっています。

ウクライナ、モルドヴァと国境を接するモルドヴァ地方。スチャヴァはかつてモルドヴァ公国の首都だった町です。1565年にヤシに中心が移るまで、文化・行政の中心として発展しました。スチャヴァを中心とした北モルドヴァ一帯をヴゴヴィナ地方と呼びます。ルーマニアの最大の見どころである世界遺産「五つの修道院」も、スチャヴァから行くのが便利です。スチャヴァ自体にも聖ゲオルゲ教会という世界遺産があります。風化が進んでいるが、五つの修道院同様、外壁にもフレスコ画が描かれています。五つの修道院とは、スチェヴィツア修道院、モルドヴィツァ修道院、アルボレ修道院、フモル修道院、ヴォロネツ修道院のことです。どの修道院の外壁にもびっしりとフレスコ画が描かれています。これは世界でも類を見ない珍しいものです。雨風にさらされるため、フレスコ画の損傷は激しく、現在修復が進められています。もちろん、内部にも隙間がないくらいフレスコ画が描かれています。

ドナウ川と黒海に挟まれた一帯がドブロジャ地方です。この地域はヨーロッパ最後の秘境といわれており、最大の見どころは世界遺産のドナウデルタです。東京都の2倍という、ヨーロッパ最大の湿地は野生動物の宝庫。特に有名なのがペリカンです。その他、世界各地から野鳥が飛来します。夏なら、ドナウ川クルーズがあります。ドナウデルタ河口の港町スリナは、デルタ観光の拠点。ペリカンウォッチングに出かけましょう。トゥルチャもまたドナウデルタの玄関口となる町。ドナウデルタ・エコツーリズム博物館センターがあるので、生息する動物を予習してから、クルーズに出かけると楽しさも倍増します。ドブロジャ地方最大の町コンスタンツァは港湾都市。帝政ロシアの戦艦ポチョムキンが避難した港としても有名です。市内にはギリシア、ローマ、ビザンツ、オスマン朝と長い歴史が残した遺跡が幾つもあります。黒海沿岸は国内最大のリゾート地。夏になるとバカンス客が集まります。ママイア、エフォリエ・ノルド、マンガリアなど、ビーチは大賑わいになります。泥風呂も黒海の名物です。マリンスポーツとともに、ぜひ楽しみたいですね！