グランレイド・レユニオン Diagonal des Fous スタッフ参戦記 愚か者への道①


ウルトラトレイル・ワールドツアー グランレイドレユニオンにフィールズオンアースのスタッフ久保が参戦してきました!
「ディアゴナル・デ・フー(Diagonale des Fous)」参戦記 愚か者への道①


ディアゴナル・デ・フー とはフランス語で直訳すると「愚か者たちの対角線」という意味で、上のマップを見ていただけると分かるように、島を対角線上に100マイル(167km)という超長距離、さらに山の中を走るという文字通り「愚か者」と言える無謀な挑戦をさす、グランレイドレユニオンの最長カテゴリーのレース名である。

トレイルランナーにとって、この「愚か者」になれることは大きなステイタスの一つであり、2017年大会はワールドツアーにも登録されたこともあり非常に大きな注目を集める大会となった。

私はこの大会に挑戦する日本のトップ女子ランナーである丹羽薫選手(UTMB2017 4位)、大瀬和文選手(UTA100km 9位)の大会参加のサポートをおこないつつ、自分も2018年のツアーに向けて実際に走ってコースをよく知ろうという目的で、参戦を決めた。

出場が決まったのは大会から約1か月前。1か月間だけの準備期間だったが、初めての100マイルレースという事もあり、とても集中して良いトレーニングが出来た。トップランナーには遥か及ばないが、自分ができるベストを尽くしたいという思いで現地に向かう。

【日本から遠いレユニオン島】
インド洋に浮かぶレユニオン島は、南半球にある唯一のヨーロッパ領土。ここでは、フランスの領土ならではの安全面と近代性が保証された中、トロピカルな異国情緒ある雰囲気を満喫することができる。

しかしながらその位置関係から日本からのアクセスは難しく、かなりの移動時間がかかる。
私はドバイとモリシャスを経由し、レユニオン島へたどり着いた。ツアーでは白砂のビーチが本当に美しいモリシャス島に1泊してからレユニオン島へ入る。


モリシャスの海は本当に美しい! モリシャスですでにテンションが上がってしまい、レユニオンに行きたくない、などと思ってしまった。

美しいビーチリゾートに対して、レユニオン島は山が有名な観光資源、ピトン・デ・ネージュ山(標高3069m)、ピトン・ドゥ・ラ・フルネーズ山(標高2632m)の2度の火山活動により、山を取り囲むようにできたカルデラによって形成されている。ピトン・ドゥ・ラ・フルネーズ山は活火山であり、今日も時おり噴火活動が観測されることがありますが、溶岩流など観光面での危険はいまのところない。レユニオン島では、びっくりするほど高い山の頂き、緑の生い茂る森など、壮大な自然の風景を満喫できます。 総面積2500k㎡からなる広大なレユニオン島では、多彩な、非常にコントラストに富んだ風景を楽しむことができる。
その為、レユニオンではトレッキングが非常に盛んで、欧州アルプスなどとは全く表情の異なるトロピカルな火山独特の植物や景色を楽しみに多くのトレッキングツアーも行われている。

レユニオン島の緑:手つかずの森林、3つの自然圏谷(トレッキングによりアクセスできるマファト圏谷、沢山の滝や断崖、繁茂した草木からなるサラジ圏谷、山の中間、突然切り立ったように現れる村が印象的なシラオ圏谷)



【レユニオンはまさに小さなフランス】

レユニオン島はフランス領という事もあり、到着すると商店やスーパー、銀行、携帯会社など、当然ながらすべてフランスと同じ会社、メーカーが並びまるでフランスに来たような錯覚に陥る。
私はフランス経験が長いので、全く不自由がないが英語がなかなか通じにくく、フランス語が出来ないと若干てこずる可能性がある。
小さな安いホテルなどは軒並みフランス語しか通じないところも多く、英語が苦手なフランスらしい状況がよく見られる。

また、クレオルというレユニオン島独特のなまりや表現があり、フランス語に不自由しない私でも聞き取りにくかったり聞き直したりすることが多々あった。

スーパーに並ぶ商品はすべてフランス本土から輸入されているものがほとんどの為、意外と値段が高い。スーパーに行っても意外とMade in Reunionの商品を見つけるのは難しかった。
レユニオン製のラム酒や、サトウキビを使ったお菓子などがごく一部名産品としてお土産になりそうなものが並んでいる。

【ワンウェイレースのグランレイドレユニオン】

グランレイドレユニオンはUTMBのように大きく1周してスタートとゴールが同じ周回レースではなく、完全にスタート地点とゴール地点が異なるワンウェイレースである。その為、ゴール方面に行ったことが無ければゴール方面がどんな雰囲気のコースなのかは全く分からない。

グランレイドレユニオン参加にあたり、我々を強力にサポートして遅れたのは、レユニオン島に2年在住経験のあるフランス人の「アントニー・ガイ」選手だった。 かれは今回のグランレイドレユニオンでなんと総合6位という素晴らしい成績でゴール。


写真は UTMB参加時のアントニー

【レユニオン最大の難関は天候の変化と気温の変化】

グランレイドレユニオンの難しさはコースプロフィールや獲得標高では測れない部分にある。
トロピカル火山島特有の非常に変化の激しい天候がまず挙げられる。 大会中に雨が降らないことはまずない、と言われるほど、場所によって天候が変化しやすく、スタートが快晴でも山間部で雨に降られることが8割以上の確率であると言われている

トレイルは火山島ということもあり、火山灰ベースの非常にやわらかい土のトレイルで、日本のトレイルに非常に似ている。
そのため雨が降るとぬかるみドロドロ地獄と化す。その為走れそうなフラットなプロフィールに見えるセクションもひどいぬかるみとなり、まともに走れないことも多々あり、そのためにゴールタイムの平均がUTMBなどと比較しても非常に遅くなっている。(35時間を切るランナーが非常に少ない)

スタート後、コースはひたすら上り続け、標高1700m辺りまで上げていくが、スタートが夜23時の為、夜のもっとも冷え込む時間帯に最初のメインエイド 約48km地点の Mare a Boue(マーラブエ)に到着する。 ここは例年非常に冷え込み、5度以下になる。寒い年では0度前後になり霜が降りる。

その為スタートのサンピエールが25度でも、防寒具は必需となるため荷物は重くなる。長袖アンダー、ゴアテックスレインウェアはもちろん、指長グローブ、耳を覆うニットキャップやBUFFは絶対に必需である。
またこの辺りはガスも出やすく、ライトのガス対策も必要となる。

このMare a Boueのエイドには、名物の「チキンのBBQやライス」が用意されている。ゆっくりと確実な完走を目指すならレユニオンのエイド食を楽しむのはお勧めだ。インドやアフリカの食文化をミックスしたようなクレオル料理は日本人の味覚に非常に合う。

私はこのレユニオンのエイド飯がおいしくて、本当に各エイドのご飯を楽しんだ。

アントニーのアドバイスは、76km地点のドロップバックエイド「Cilaos」からがディアゴナルデフーの本当の核心部「マファテ山地」である。
シラオスからは一気に気温が上がり30度近くの炎天下の中を厳しいのぼりを繰り返す、最大の難所となるそうだ。
なので、そこまでいかに温存していけるかが最も重要なポイントとなる。

【世界で最も盛り上がるスタート】

レユニオン最大の魅力は何といってもそのスタートにあるだろう。

島最大のスポーツイベントと言われるグランレイドレユニオンのスタートは、島中の人々の仕事終わり後の23時という事もあり、スタート地点にはすさまじいギャラリーが応援にやってくる。その人数は世界最高峰と言われるUTMBの比ではない。おそらく確実に10万人以上は集まっているものと思われる。
実にスタートから約10kmは延々と人垣が出来て、沿道からの熱烈な応援が絶えない。
随所にミュージシャンがライブをしていたり、海からは盛大に打ち上げ花火が上がり、これほどまでに盛り上がるスタートは他に類を見ない。


私は主催者の方のご厚意で、何を思ったかエリートランナー枠に案内された。
エリートランナー枠はスタート待機場所も完全に区別され、約2600名の参加者のうち200名ほどが、最優先枠の先頭に並ぶことができる枠となる。

私はなんと世界的特攻番長のジム・ワムスレー選手と一緒にエリート枠に案内されてしまった!

驚異的記録でニュージーランドのTarawera Ultra Marathonを優勝し、UTMBでも中盤までレースを引っ張り、前半からとにかく突っ込むレーススタイルが彼の持ち味。 右 ジム・ワムスレー選手、左 大瀬選手、大瀬選手の隣が私で、その隣は知らないおじさん。

大瀬選手、丹羽選手、そしてレジェンド鏑木選手のすぐそばに並び、人生で初めての100マイルレースのスタートを迎えることとなった。
この時点ですでに感無量。世界最高峰の大会に世界のトップランナーと一緒に並ぶその感動をかみしめつつスタートを待つ。

レースMCはUTMBでもおなじみのまさにトレイルの声と言われるフランス人MCが盛り上げるから、スタートが盛り上がらないわけがない。
最高潮の盛り上がりと共に、いよいよレースがスタートした!

 


・・・つづく。










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