アラゴンの古都:サラゴサ


スペイン北東部にあるアラゴン州の州都・サラゴサ(Zaragoza)。

スペインの2大都市マドリードとバルセロナの丁度中間地点にあり、他の大都市や観光名所にもアクセスが便利な立地のため旅行者も年々増えてきています。

またスペインの歴史の中で重要な、イスラーム勢力による支配とキリスト教徒によるレコンキスタ(国土再征服)。このサラゴサの地も例外ではなく、8世紀初頭からイスラーム教徒の支配下として統治され、この時期に現存している様々な建築が作られました。その後12世紀にレコンキスタによりアラゴン王国の首都となり、周辺にあったイスラームの小王国を征服してカタルーニャと連合王国を組むまでに発展しました。

その連合王国の最大版図はイタリア南部からアテネ、マルセイユまで延び、地中海の大帝国となりました。近年では2008年にサラゴサ国際博覧会の開催や、地元のサッカーチーム、レアル・サラゴサに日本から香川選手が加盟したことでで注目を浴びています。


今回はそんな現在のスペインの基礎を作ったともいえる、アラゴン王国の古都・サラゴサにある観光名所をご紹介します。

 

◆ヌエストラ・セニョーラ・デル・ピラール聖堂◆

伝承によれば、ローマ統治下の西暦40年、キリスト12使徒の一人、聖ヤコブがエブロ川の岸辺で祈っていると、聖母マリアが彼の目の前に現れてヤコブに柱を与え、これを使って教会を建てるように命じたと言われています。彼はその通りに川辺に聖母を讃える小さな礼拝堂を建て、これが世界初の聖母に捧げられた聖堂となりました。それ以降、教会は焼失と再建を繰り返し、17世紀に現在のバロック様式の巨大な大聖堂が建てられました。

当初奉納された柱が置かれた部屋にはいつも参拝者で賑わっています。それ以外にも大聖堂の内部は芸術的な装飾品で飾られています。エレベーターで塔の上まで登ることができ、塔からはサラゴサの街並みを一望できます。教会自体も特に夕暮れ時は美しく、エブロ川に反射するライトアップが人気です。また、この教会で祀られている”柱の聖母”はスペイン語圏で守護聖人としてスペイン国内の聖母信仰の中心地でもあります。


◆ラ・セオ(サン・サルバドール大聖堂)◆

ローマ広場の一角には、ラ・セオ(大聖堂)が建っています。これは様々な建築様式を融合した独特の建物です。というのもサラゴサがイスラーム教徒の統治下にあった際に、この建物はサラゴサ最大のモスクとした建てられたという歴史があるからなのです。この大聖堂には、外観はイスラム建築、内装はゴシック建築に分かれ、場所によってはロマネスク、ルネサンス、バロックと、全部で5つの建築様式が使われていて、世界遺産「アラゴンのムデハル様式の建築物」のうちの一つとして登録されています。

併設の博物館には中世フランスのフランドル地方のタペストリーが収蔵されています。




◆ピラール広場、ラ・セオ広場◆

エブロ川のほとりに歴史的な建築物が集まる旧市街の中心地がピラール大聖堂の前にあるピラール広場、そしてピラール広場の東側にある、ラ・セオ広場(ローマ広場)です。ラ・セオ広場はローマ時代の街の中心地で、地下には初代ローマ皇帝アウグスティヌスを祀った神殿跡が残っています。紀元前から現在までずっと街の中心だった、というのはすごいことですよね。現在ではフリーマーケットなどが開催されています。


◆アルハフェリア宮殿◆

旧市街の西側に建つ世界遺産「アラゴンのムデハル様式の建築物」のうちの一つ、アルハフェリア宮殿です。11世紀のイスラーム統治下でスルタン(国王)の城として建設され、レコンキスタでサラゴサがキリスト教徒に奪回されてから改築され、アラゴン国王やカトリック両王の居城や宗教裁判所として使われました。

現存している宮殿内には、イスラーム美術の傑作・二連アーチや礼拝堂、オレンジが植えられたパティオ、天井の装飾としてアラゴン王国とカスティーラ王国の国章を囲んで八芒星が刻まれていて、夜のライトアップによく映えます。イベリア半島に現存しているイスラム建築としてコルドバのメスキータ、グラナダのアルハンブラ宮殿と並ぶ代表的建築とも言われ、アルハンブラ宮殿の建築にも影響を与えたようです。1987年から建物の一部をアラゴン自治州の議会が使用しています。

※建築された当時の状態で残っている床や壁がある場所は立ち入り禁止となっています。




◆サン・パブロ教会◆

世界遺産「アラゴンのムデハル様式の建築物」のうち最後の一つが、サン・パブロ教会です。13世紀に建てられたこのゴシック・ムデハル様式の建物は、何度かの改築を経て今に至ります。特に教会内部のルネッサンス期の彫刻には一見の価値があります。



◆サラゴサ美術館◆

旧市街にあるサラゴサ美術館には、ローマ時代からの美術品が収蔵されていて、スペインを代表する画家・ゴヤの作品と北斎や広重らの浮世絵が人気です。博物館は考古学と美術のセクションに分かれており、ここでしか見ることができない貴重なコレクションが収められています。


◆プエンテ・デ・ピエドラ(石橋)◆

ピラール聖堂の脇を流れるエブロ川にはもともと、ローマ時代に造られた橋が架かっていました。この跡地に7つのアーチからなるゴシック様式の橋がプエンテ・デ・ピエドラです。

橋の両端にはサラゴサのシンボル・ライオン像が設置されていて、ピラール聖堂を写真に収めるピッタリなスポットでもあります。

この橋の下を流れているエブロ川は、”イベリア”の語源となった川でもあり、スペイン国内だけを流れる川としては最長の約930kmの大河です。紀元前にはカルタゴとローマとの国境代わりでもあり、カルタゴの将軍ハンニバルが10万の軍勢を率いてこの川を渡り、ローマに戦争を仕掛けたことは世界史でも重要な事件です。


◆ピラール祭◆

毎年10月12日に行われる、スペイン4大祭りの1つ「ピラール祭」。旧市街のピラール広場で行われ、聖母の祭壇が花で彩られたり、花火や闘牛、パレードなどでサラゴサの街が盛り上がります。国内外から多くの観光客が集まり、その数はサラゴサの全人口の3倍にも及ぶのだとか。


夜のサラゴサの町歩きもぜひ! ピラール教会へと続く大通り・アルフォンソ1世通りは、夜遅くまでショッピングを楽しむ人でにぎやかですし、レストランやバルもあり食事やお酒を楽しむことはもちろん、旧市街の建物を中心にライトアップも行われているので昼間とはまた違った街を楽しむことができます。

もしスペインに訪れたい、とお考えなら、このサラゴサも是非旅程に加えてみては?








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