2005年にはそろって世界遺産にも登録されたガウディ建築の中でも、今回はカサ・バトリョについてご紹介します。
カサ・バトリョはその名の通り、バトリョさんの”Casa(家)”、つまりバトリョ邸という意味で、19世紀のバルセロナの大商人バトリョ氏の依頼で20世紀初めにガウディが「海」をテーマに全面改築を請け負ったモダンな邸宅です。
モデルニスモ様式を取り入れたデザイナーズハウスで、各パーツにはガウディが得意な曲線や”ガウディ・ブルー”と呼ばれる青や白のステンドグラスが用いられています。
バルセロナのメインストリートに面したこの建物は、当初は5階建てでしたが地下1階から地上5階、屋根裏が後に増築され、富豪が住むステータスシンボルとして「目立つ家」を目指して造られました。完成当初から「骨の家」や「あくびの家」などあだ名がつけられましたが、長い間非公開。ようやく観光客に解放されたのが2002年のガウディ生誕150周年の時のことでした。
◆建築のテーマは?◆
この家を建てる時のテーマについて、現在3つの説があります。
1つ目の説:
バルセロナがあるカタルーニャ地方の聖人:サン・ジョルジオのドラゴン退治伝説にちなんだ「ドラゴン」を表しているという説。確かにドラゴンの鱗のような屋根、別名「骨の家」とも呼ばれる所以、骨のようなバルコニーや柱はドラゴンの犠牲になった人々の骨を表現したのではないかと考えられています。
2つ目の説:
屋根はイタリアの喜劇に出てくるキャラクター:アルルカンの帽子、バルコニーは仮面、トランカデイスのタイルモザイクは祭りの紙吹雪に見立て、謝肉祭を表しているのではないかという説。
3つ目の説:
色とりどりな装飾によって海底洞窟をイメージしているという説。現に自然光を屋内に取り込むように造られていて、晴れた日には明るい日差しが差し込むことでタイルがキラキラと輝きます。外壁のブルーカラーも海をイメージしたと言われており、波打つ窓枠や泡のようなステンドグラスは大変美しいです。
◆家の中に入ってみると◆
カサ・バトリョのエントランスへ足を踏み入れると別名「光庭」とも呼ばれる中庭が目に入ります。
4つの壁面にはガウディ・ブルーの海底をイメージした市松模様のタイルが貼られています。特筆すべきは全体が同じ色に見えるよう、上階は光を吸収する濃い色、光を反射する白っぽい色のタイルを貼り、5段階で色調変化させています。窓も工夫があり、光の強い上の階は小さく、逆に下に行くに従って大きくなっていき光を取り込む工夫がなされています。まさに海というテーマが再現されています。
玄関ホールからは曲がりくねった階段を登っていきます。ガウディがデザインしたエレベーターもあるので、行きはエレベーター、帰りは階段のように使ってみるのも。階段手すりに施された繊細な装飾は必見。
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玄関に比べれば控えめな装飾ですが、建物裏のよく調整されて作られたモザイクのあるテラスも見所の一つ。
屋上の破砕タイルの装飾は、ガウディの代表作でもあるグエル公園の波打つベンチを豊富打つとさせます。玄関に面するラシア通りから見えるタイルは大きく、ドラゴンの背中のようです。一方で反対側のタイルは小さくオレンジ色に変化し、トカゲの背中のような造形になります。
しかもこの建物、世界遺産なのですがまだ人が住んでいます。そのエリアは見学ができないので、観光客は入口と中庭、最上階と屋根裏、屋上のみ立ち入りが可能です。
また、通年午前1時までライトアップされているので昼は内部を鑑賞し、夜にまた立ち寄って外からライトアップを観るというのもオススメ。
◆インフォメーション◆
【住所】Passeig de Gracias 43
【公式HP(英語)】https://www.casabatllo.es/en/
【チケット】一般25€、学生22€(学生証必携)、65歳以上22€、乳幼児無料
※現地で購入すると4€高くなります。
【アクセス】Passeig de Gracia駅から徒歩2分
【開館時間】9時~21時(20時最終入場)
※イベント等によって営業日や開館時間が変更される場合があります。事前に公式HPをご確認ください。