今回はスペイン北部のカンタブリア州にある村・サンティリャーナ・デル・マルとその郊外にあるアルタミラ遺跡についてです。
15~18世紀の貴族の趣きのある家々が建ち並ぶこの村は、フランスの大作家ジャン=ポール・サルトルが『スペインで最も美しい村』と表現したほど。2011年から社会的なプロジェクトとして開始された「スペインの最も美しい村」協会にももちろん加盟しています。
街の起源は9世紀にまで遡り、トルコで殉教した聖フリアナの聖遺物を修道士がこの地に持ち込んだことで現存するサンタ・フリアナ参事会教会が設立され、その周辺に出来た集落がサンティリャーナ・デル・マルでした。近年で街はずれにある世界遺産アルタミラ洞窟への拠点としても観光客を集めています。

■パラドール
市内中心部にある広場に面した立派な建物がスペイン国営のパラドールの一つ、パラドール・デ・サンティリャーナ・ジル・ブラスで、この建物の近くにももう一軒パラドール・デ・サンティリャーナ・デル・マルがあります。同じ地域にパラドールが二軒あるのは珍しいケースです。

■降誕劇
この町では1965年から毎年、町民がキリスト誕生にまつわる様々な場面を演じる劇が開かれます。夕方から始るこのお祭りは500名近い役者が参加し、参事会教会でクリスマスソングの合唱や人形劇から始まります。その後降誕劇がはじまり、その中でローマからの勅令、キリストの両親ホセとマリアの出発、馬小屋へ赴く聖女や羊飼いへとお告げを行う天使などのシーンが演じられ、クライマックスには東方三賢者が馬小屋で産まれたキリストを敬う場面が演じられます。
開催:2020年1月5日 17:30~20:00
■アルタミラ洞窟
この町の郊外にあるアルタミラ洞窟は、おそらく学校の歴史の教科書でまず間違いなく目にする壁画で有名です。特にバイソン(水牛)が描かれたものが有名で、絵の向きや大小が多様で、描かれ方も一通りではないことが特徴です。最初に壁画が描かれたのも、スペインに人類が辿り着いた約3万5000年も前のことだと考えられ、一旦氷河期を挟み約1万1000年前までに現在残されている絵画が描かれたと言われています。こんなに古い絵画が現代まで色鮮やかに残ることができたかについては未だに謎が多く残っていますが、1879年に発見されるまでは何かしらの原因によって洞窟の入口が塞がったことで外気と遮断されたためと考えられています。
洞窟自体は270メートルの奥行きがあり、バイソンのものを含めて数十種類の壁画が確認されていますが、1985年に世界遺産に登録後の観光客数増加のためにオリジナルの壁画が劣化し、現在は非公開になっています。その代わりとして、隣接するアルタミラ博物館に精巧なレプリカが展示されています。洞窟の壁の形状はもちろん、壁画の大きさも色もオリジナルと同じ技法を用いて作られているため、一見の価値がある博物館となっています。

■インフォメーション■
サンティリャーナ・デル・マルアクセス
ビルバオからバスでサンタデールを経由し、サンティリーニャ・デル・マルまで。乗り換え含め所要約3時間弱。
アルタミラ博物館公式HP(英語):https://www.mecd.gob.es/mnaltamira/