黒いマリア像


 日本から多くの人が訪れる、スペイン第二の都市・バルセロナ。
カタルーニャ地方のこの大都市はなんといってもガウディ建築の集大成・サグラダ=ファミリアで非常に有名です。
ですが、バルセロナの郊外にこのサグラダ=ファミリアの奇妙な形状のもとになったとも言われる山があるのはご存知でしょうか。


バルセロナから電車で片道1時間半ほどのところにある、カタルーニャ語で”モンセラート(のこぎり山)”という名のこの山は、標高1241メートルの頂上から裾野にかけて切り立った奇岩がいくつも寄り集まっており、ひとつの塊となっています。



冒頭でも紹介したスペインを代表する建築家・ガウディは、バルセロナの各所にサグラダ=ファミリアをはじめ、グエル公園、カサ=バトリョなどユニークな建築を残しています。そんな彼が足しげく通ったのが、このモンセラートでした。一説にはガウディ建築の多くがこのユニークな山にインスパイアされたものなのだとか。確かにモンセラートと彼の作品の曲線には似ている部分もあるかもしれませんね。

 

山の中腹、標高700メートル地点にある聖母マリア修道院は、黒いマリア像や世界的な少年聖歌隊によるミサで大変有名です。この修道院はその山に呑まれたような外見もさることながら、サンティアゴ・デ・コンポステーラと並ぶ、カトリック・ベネディクト会のスペイン二大巡礼地となっており、古くから祈祷のために信者が訪れる場所となっています。



この修道院の成り立ちとして、12世紀にこの岩山に光を見た羊飼いの子どもたちは、山の洞窟の中で大きな聖母子像を発見しました。これを知った教会の司教は、何とかその洞窟からこの像を運び出そうとしますが、重すぎて運べません。こうして最初の修道院がこの像の周りに形作られていきました。その後19世紀初めのナポレオン軍の侵略によって、火災と略奪に遭い、修道院は破壊されました。ですがこの黒いマリア像だけは修道士や地元の人々の手によって、侵略前に山中の洞窟に隠されており、無事だったということです。このニュースを知った当時のローマ教皇は、聖母マリアをカタルーニャの守護聖人と認めたそうです。その後もスペイン内戦や第二次世界大戦でもファシスト政権から迫害されますがなんとか存続し、現在の姿があるとのこと。


その後も、黒いマリア像を触るとどんな願いも叶うという噂がどんどん大きくなり、スペイン国外から多くの人々が参拝するようになっています。


モンセラートに到着したら、まず修道院付属の教会堂を目指しましょう。ロープーウェイや登山鉄道が到着する山頂駅からは歩いて5分程で、土産屋、カフェテリア、ホテルなどが並んでいます。



12使徒の彫像の下をくぐって教会堂に入ると、正面の祭壇上部には洞窟で見つかったとされるラ・モネレータとの別名もある黒いマリア像が祀られています。このマリア像は12世紀のものと推測される木彫りの像で、聖母の膝に座るキリストは19世紀に復元されたもの。この教会を訪れた信者たちは教会堂の脇を通り、このマリア像にタッチして思い思いの願い事をしています。


この像は防弾ガラスに包まれており、マリア様が世界や宇宙を象徴する球を持っています。なぜこのように真っ黒な像になってしまったのかという理由については諸説あるらしいのですが、作られた当時は白かった像がろうそくのすすで黒くなってしまったという説が有力だとか。また、周りは絢爛豪華なモザイクで装飾が施されているのですが、そのうちの一人がガウディなので探してみて下さいね!教会堂内は撮影OKなので、訪れた方の多くがマリア像と一緒に写真を撮っています。



このマリア像と並んで有名なのが、エスコラニアと呼ばれる少年聖歌隊が歌うミサ。14世紀にまで遡るヨーロッパ最古の少年聖歌隊で、通常時は13時から(日曜と祝日は11時から、事前に公式HPにて要確認)行われるミサでその美しい歌声を聞くことができます。地元カタルーニャ州の9~14歳までの50名ほどのメンバーによる聖歌隊は入るのに大変厳しい試験があることから、非常にハイレベルな歌声を疲労してくれます。このミサは観光客に非常に人気のため、良い位置で鑑賞したい場合は席の確保をお早めに。

このほか教会堂前には修道院所蔵の宝物や考古学品、エル・グレコ、ピカソ、ダリ、ミロなどの絵画を展示するモンセラート美術館があります。


時間があれば、ケーブルカーでサン・ジュアン展望台まで登ってみましょう。モンセラートの頂上近くに位置する展望台からの眺めは絶景です。晴れた日には山の更に向こうにフランスとの国境沿いのピレネー山脈も見渡せます。


この展望台からはサン・ジュアンやサンタ・コバまでのハイキングコースも複数あり、絶景を間近で見てみたい方はそちらを歩いてみるのもおすすめです。


◆サン・ミゲル展望台

修道院の方から見上げた時に、大きな十字架がぽつんと立っているところがサン・ミゲル展望台です。この展望台まではサン・ジュアン展望台から片道40分程で、簡単なハイキングをしながら絶景を見たい方におすすめです。





◆サンタ・コバ

サン・ジュアン展望台から片道20分程のところにあるのが、教会堂に安置されている聖母マリア像が見つかったとされる洞窟、サンタ・コバ。不思議な伝説が数多く残るこの洞窟には教会が建てられており、教会の中を見ることができます。この教会まで続く道の途中には、ロザリオの秘跡を表す15のモニュメントがあり、その内のひとつ、『キリストの復活』はガウディの作品となっています。





これらハイキングロードから名前の通りのこぎりのような岩山を眺めると、現在も修道士たちが暮らす自然と調和した修道院を見ることができます。









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