サン・イシドロ祭りは、マドリードの守護聖人であるサン・イシドロの日である5月15日までの数日間を祝う、由緒あるお祭りです。
スペインを代表する画家ゴヤも、彼の作品でこのお祭りを描いています。
生粋のマドリードっ子たちが生き生きとお祭りに参加する様子が天才画家の心に響いたのでしょうか。
というのも、このお祭りはスペイン三大祭りとはまた趣の違った庶民的なもの。
別名『農民のお祭り』。聖人イシドロが生きた11~12世紀には、農夫たちの中には満足に食事をできない者もおり、イシドロは彼らを自宅まで連れ帰っては自分も苦しいながらもご飯を振る舞っていたそうです。また、彼は水場をすぐに見つけることができたらしく、このお祭りの中でも中心になるのは水と聖人にまつわるものになっています。
お祭りはマドリードの市内7地区を会場として、サン・イシドロ公園にある礼拝堂に巡拝し、付近の噴水で湧き出る聖人の水を飲むという習わしがあります。市内各地ではパレードやコンサートの他にも、 スペイン最大級の闘牛祭もこの期間に合わせて行われ、ラス・ベンタス闘牛場では最高のマタドール(闘牛士)たちが集います。
お祭りが夜に差し掛かると、伝統のものからインディーズまで幅広いライブ演奏、お祭りの期間中はどんちゃん騒ぎが続きます。日をまたぐころになると、レティーロ広場からは空高く打ち上げられた花火を見ることができます
日中に盛り上がりをみせるお祭りのメイン会場・サン・イシドロ公園のプラデラ(芝生)には、カセタ(屋台)がたくさん並び、多くのマドリードっ子がカセタで買った食べ物を芝生に座って食べています。この公園には、お祭り期間中に巡礼をしている人たちもやってきたり、『チュラポ』と呼ばれるマドリードの伝統衣装、ゴヤ風の伝統衣装『ゴイェスコ』を纏った地元の人たちが、マドリードの伝統的な踊り『チョティス』の音楽が流れます。
期間中は毎年マドリード市内でコンサートが200近くも開かれ、カセタも多く出展されるので、ちょうどこの期間にマドリードを旅行される方は定番の美術館だけでなく、マドリードの庶民的な面を体験してみるのも面白いかもしれません。
このお祭り期間中に用意される食べ物についても、書いておかなければいけません。
もともと庶民的なお祭りであったということもあり、この時期によく食べられるものも同じく庶民的。代表的なものがエントレシホスという、仔羊の腸間膜という部位を油で揚げて塩を振ったもの。そしてガリネハスという仔牛のモツ。これらは最近モダンになってきているマドリード市内のレストランではまずメニューに載っていない商品だそう。
最近だとこの伝統的な料理に加えて、ロスキージャスと呼ばれるドーナツを食べてレモネードで流し込むという伝統が新たに加わったようです。
マドリード風レモネードには、ワインとレモンをべースに、スライスされたリンゴが入っています。ロスキージャスには、玉子入りのトンタス、トンタスに粉砂糖をまぶしたリスタス、白いメレンゲがのったサンタ・クララ、アーモンドを使ったフランセサスがあります。