アールデコの時代を築いた匠 ルネ・ラリック


 前回、アールヌーボーの街ナンシーについてお伝えしました。今日は、アールヌーボーからアールデコの両方の時代に活躍し、時代と共に革新を遂げたガラス工芸家ルネ・ラリックをご紹介します!



ラリックは、シャンパーニュ地方のアイ村で生まれました。アールヌーボーの全盛期に宝飾デザイナーとして、既に成功を収めています。その当時、女性のファッションは勢いよく変わっていきました。女性を締め付けるコルセットがなくなり、シンプルなものが好まれると同時に華やかな装飾は衰退していきます。この頃、ラリックは一部のお金持ち向けの宝飾のデザインに限界を感じるようになります。

現在、白金台の庭園美術館では、ルネ・ラリック展が開催(4/7まで!)されています。ラリックが香水瓶のデザインを依頼されたのをきっかけとして宝飾の世界から離れ、ガラス素材を使ってアールデコの新しい時代を築きあげていった軌跡を紹介しています。



ガラス工芸家となる引き金となった香水瓶、そして花瓶やテーブルウエア、照明、車内装飾のカーマスコットなどを幅広く展示しています。庭園美術館の本館は旧皇族の浅香宮邸。正面玄関のガラスのレリーフや客室のシャンデリアなどもラリックの仕様となっているのでアールデコをおうち丸ごと一軒、満喫できます。

基本的には、ガラス工芸は鋳型を使い量産していましたが、今回は、シール・ペルデュという1点制作品も展示されています。これは、限られたお得意様のための作品でした。制作途中で型を溶かしてしまう1点もの、とても貴重なお品です。



こちらは、「バッカスの巫女たち」の花瓶です。ワインの神バッカスに仕える巫女たちが情熱的に踊る様子がオパルセントガラスで見事に表現されています。オパルセントガラスは、宝石のオパールに似た乳白色のガラス。後ろから受ける光によってガラスの表情が変化します。

薄青く見える花器ですが、光が当たると巫女の身体が火照ったように映し出されます。身体だけが薄く赤くなるのは、何故…?という不思議を抱えつつも、その官能的な様子に見入ってしまいます。



もう一つ注目したいのが、ラリックのデザイン画です、ラリック展では、彼の作品とそのデッサンを並べて展示しているコーナーがあります!彼は、頭に浮かぶものを四六時中描き、人と話しているその間にも鉛筆が動いていたとのこと。デザイン画には、成形の時の注意点が走り書きされているものもあって、彼のガラス工芸に対するひたむきな情熱を感じます。


ラリック美術館公式サイト(https://www.musee-lalique.com/en)より写真抜粋(ウインジャン=シュル=モデ)

ラリックの工場は、フランスに2つありました。一つは、パリ近郊のコンブ=ラ=ヴィル。もう一つがアルザス地方のウインジャン=シュル=モデの工場。前者は、戦時中も細々と稼働していましたが、後者は、第2次大戦中にドイツ軍の侵攻によってとり上げられてしまいます。工場が閉鎖されていた5年間のラリックの痛みは計り知れません。

1945年の春、連合軍の勝利によってドイツからの接収が解かれると、その報を聞いた85歳のラリックは安堵して息を引き取ったといいます。彼にとってそれ程大切だったアルザスの工場…今もラリック社及びラリック美術館として営みを続けていて彼の偉業を伝えています。

☆ウインジャン=シュル=モデのラリック美術館を巡るツアー

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*ラリック美術館以外の写真5点は、庭園美術館のルネ・ラリック展の展示物です。












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