2019UTMF「グザビエと過ごした1週間」①グザビエを三島駅に迎えに行く


【はじめに】
 
2020UTMFはそれまで想像もしなかったような出来事で、開催を見送ることとなった。

今年からフィールズオンアースもオフィシャルツアーとして、海外参加選手のツアーを準備していたが、それどころではない事態となった。
本当に残念ではあるが、今はいち早いコロナの収束を祈りながら、全世界で自粛の日々が続いている。

そんなことになるとは夢にも思わなかった2019年の4月22日に、私は新幹線の「三島駅」にいた。
そう、UTMF2019年の優勝候補筆頭、そしてUTMFの歴代参加選手で間違いなく最強の男を待っていた。

本当はこのレポートはUTMF終了後直ちに更新したいと思っていた。しかし、UTMFが終わって中一日でギリシャのツアーに飛び、ギリシャ終了後そのままイタリアのツアーに飛び、帰国して1週間程度でニューカレドニアのツアーに飛び、ぎりぎりの状態で7月のアンドラ、ツールドフランス、8月のUTMBの準備を並行して進めていた私には、ブログを更新できるキャパシティが不足していた。

そうこうしているうちに1年がたってしまった。。もうこれを公開するのは今しかない。
コロナは旅行業界に致命的打撃を与え、フィールズオンアースも休業を余儀なくされた。
悲観すべき事態だけど、埋没していた「グザビエと過ごした1週間」を公開するチャンスを得た。

世界最強ランナーと過ごした1週間、恐らく日本人でグザビエと1週間ずっと同じ釜の飯を食べて同じ屋根の下で暮らした人は、私だけなんではないだろうか。 この貴重な経験を記録しておくべきだと思い、今やっと公開にこぎつけた。 

乏しい文章力でつづる支離滅裂な内容とは思いますが、興味がある方に読んでいただけたら本当に幸いです。

フィールズオンアース KUBO Nobuhito

【きっかけ】
2018年の暮れ頃に、以前お世話になり、グランレイドレユニオンなどでも一緒になったフランスの友人から


「UTMFでグザビエのTeam Asics のUTMFサポートして貰えないか」

と言う、話を貰った。


グザビエ テヴナール選手は、世界で現在3名しかいないキリアン ジョルネ、フランソワ デンヌと

肩を並べるUTMBを3回優勝した、世界最強ウルトラトレイルランナーの1人である。同時にOCC、CCC、TDS、UTMBと言うUTMB関連レースを全て優勝している世界で唯一の選手でもある。

グザビエ・テヴナール選手は間違いなく、現在存在する世界で最も強いウルトラトレイルランナートップ3の一人だろう。

UTMBを3回優勝しているグザビエ・テヴナール選手


私自身が初めて完走した2018UTMBの覇者であり、あのキリアン ジョルネ、フランソワ デンヌと肩を並べるグザビエ選手のサポートなんてまたとない機会だ。


その友人からグザビエ選手のコーチであるローラン氏とローラン氏の奥様で同じくいつも遠征に帯同しグザビエのサポートをしているキャティさんと、直接連絡を取りながら準備を進めていった。



【Team Asicsのコーチ Laurent とCatherine】


グザビエ選手は数々の成功を収めてきているが、その側にはいつもコーチのキャティさんとローランの姿がある。以前悪天候により短縮となった2016UTMFの際も2人が帯同しており、UTMBを始め大きなレースではいつも一緒だったことから、私は始めグザビエ選手のご両親なのではないか?と思っていた。

大きな大会では常にキャティさんがグザビエをサポートし続けている


きっとそう思っている人は多いのでは?


でもこの2人はご両親ではなく、元々はグザビエがまだトレイルを始める前から「クロカンスキー」のクラブチームの指導者として、中学生のグザビエの頃から関わってきているのだそうだ。


だからこそ、まるでご両親かと思うほど全てを知り尽くしたお互いの絶対的な信頼関係で成り立っているように感じた。その様子は、私が帯同した1週間の随所で垣間見られた。

ローランさん(左)とシルヴァン選手(右)


【世界最強の選手を迎える準備】


2019UTMFには、グザビエともう2人 Team Asicsとして選手がやって来る。

2017 グランレイドレユニオンで劇的な優勝で一気にトップランナーの仲間入りを果たした「ブノワ ジロンデル」選手と、今までは20ー70kmの比較的ショート、ミドルレンジで活躍してきた女子選手の「シルヴァンキュソ」選手だ。


ブノワ ジロンデル選手は2018年もあのフランソワデンヌ選手とグランレイドレユニオンで対決し、後半にデンヌ選手へ追いつき、同着優勝し実質2連覇を果たした選手。 今現在UTMBよりはるかに難易度が高いとされる「グランレイドレユニオン」でフランソワデンヌ選手と同タイムで走れた世界で唯一の選手だ。

2018グランレイドレユニオンでは、それまで敵なしと言われていたフランソワデンヌ選手に終盤追いつき同着優勝し、実質2連覇した。


まさしく世界最強の選手たちを迎え入れることとなり、なかなかのプレッシャーである。しかも依頼を受けた時期がUTMFの抽選も終了し、多くの参加者たちが既に宿泊を確保した後であったから余計に簡単ではなかった。


コーチのローランさんから「ゴール地点からなるべく近い貸別荘を見つけて欲しい」との依頼。チームはスタッフと選手合わせて6ー7名来る予定だった。

そして女子選手もいるので寝室が4部屋以上ある貸別荘を見つける必要があった。


これは簡単ではなかった、方々探し候補となりそうな貸別荘を3軒ほど見つけて案内した。その中の一つを気に入って貰えたので、一旦その宿を確保。

しかし、実際に行ってみたら写真の印象より悪いことも多々ある。
到着の約3週間前にその貸し別荘を確認しに行った。親切なオーナーさんに案内してもらい家の内部を隅々までチェックする。世界最強の男が快適にレース前最後の時間を過ごしてもらわなくてはならない。
特に睡眠は重要で、家は良くても深夜に騒音があったり、布団がせんべい過ぎて腰が痛くなっては絶対にいけない。 寝具はすべて布団であり、普段ベッドで生活している彼らの睡眠に適切かが非常に心配だった。
なのでオーナーにお願いして集めのクッションの良いマットレスを選手の人数分最低3枚追加をお願いした。
部屋中の写真、富士山の見えるベランダからの景色、キッチンからバスルーム迄すべて撮影し、コーチのローランとキャティにすぐに送信した。
しばらくして「パーフェクトだ」 と返信が来た。
まずは一つ最大のミッションが完了した。

【三島駅へ】
4月22日、ぞろぞろと彼らが乗っているはずの新幹線の乗客が階段を下りてくるが、なかなか姿を現さない。殆ど誰もいなくなり、「まさか乗り越したか?」と不安になる。
少しして大量の巨大なかばんも持ったTeam Asicsご一行様が階段を下りてきた!
4月22日 三島駅に到着  新幹線でグザビエ、ブノワ、女子選手のシルヴァン、コーチのローラン、キャティ夫妻、メディアのアントワンと合流。
なぜ三島駅かというと、彼らは全員2週間ほど前に日本に到着し、神戸のアシックス本社?工場?を見学したうえで新しいシューズ開発の為の多くのテストや撮影を消化し、神戸から新幹線でアクセスしたのだ。
当初はレンタカーで移動しようか、飛行機か、高速バスか予算を含め様々な選択肢があったが、日本のゴールデンウィーク近くの渋滞や、移動時間などを考慮したうえで新幹線で三島駅に到着し、そこからレンタカーを利用して移動することが最も選手への負担が少ないと判断してそのように手配、アテンドした。


駅隣接の海鮮料理屋でサラダと蕎麦、お寿司を少し食べる。

まだグザビエはあまり目を合わせてくれず、予想通りのやや人見知りな感じ。

なんとか打ち解けられると良いが。。

前回のUTMF、スペイントランスバルカニアでも顔を合わせて少しだけ話したことはあるが、やはりあまり覚えていないみたい。。。


最初のランチは、おもてなしの定番「箸レクチャー」から始まる。みんなあえて箸にチャレンジし「アスリートのダイエットに最適なアイテムだ!」と談笑しながらランチ。



とにかく彼らのこれからレースまでの生活、準備がスムーズに行くように努めたい。



【三島駅からレンタカーで河口湖へ】

チームのオーダーで自炊可能な貸別荘を2ヶ月前に依頼されたが、既にほとんどの宿が埋まっており、検索は困難を極めた。なんとか運良く大池公園から1,5km の場所に一軒家の貸家を手配。 


心配だったので一度事前確認に行った。全部和室で布団での寝泊まりとなるのが若干気がかりだったのでオーナーにお願いして選手3名分だけは、集めのマットレスを追加してもらえるよう手配。最大12名まで泊まれる4LDKだったので、あとは敷布団を重ねれば、おそらくベッドに近い寝心地になるだろうと考えた。


100マイルレース前の睡眠は非常に大切なので、万が一まだ固すぎる場合はさらに厚いマットレスを用意することにした。


キッチン冷蔵庫、電子レンジ、トースター、食器類一式揃っていることを全て確認しこの貸家に決めた。


三島駅でレンタカーを借りて、コーチのローランとキャティが運転できるように手配。こちらも事前に翻訳書類を作成する必要があり、事前にパスポートや免許情報を貰い日本で運転ができる必要書類を揃えた。2016年の遠征では、この準備ができず急遽アシックスの日本社員が車を手配し、移動手段とする事となり、いろいろ大変だったようだ。


無事車の手配を終えて、三島から河口湖へ移動。


残念ながら富士山は雲の中、まだ姿を見せてくれない。


無事河口湖の貸家に到着。入った時の印象がどうかかなり心配だった。

純和風の和室に入るとグザビエは

「これこれ!完璧!いいね!」

手配していた貸別荘に到着したグザビエ。プレゼントした「一番のハチマキ」をつけて喜ぶ姿が子供みたい。
と目を輝かせて畳の部屋を見て回ってくれたので、まずはホッとする。


大量の荷物を次々各自の部屋に搬入し、洗濯機やトイレ、お風呂などの使用方法を説明、コーチのキャティさんと女子選手のシルヴァンと買い出しへ。



【Team Asicsの食事へのこだわり】


世界でたった3人しかいない、UTMBを3勝しているグザビエテヴナール、グランレイドレユニオン2連勝のブノワジロンデル選手たちがどんな食事をするのか、これが一番興味深かった。


貸家を下見に来た時も、フランスや欧州のアスリートがよく食べるオリーブオイルやシリアル系、ワインなどが入手できる店や、ある程度種類が揃ったスーパーのチェックもした。 トップアスリートに重要なのは快適な睡眠と良質の食事。


貸家は山梨名物の有名なほうとう屋さんが3件も軒を連ねる真ん中に位置しており、野菜も豊富で炭水化物の取れるほうとう屋さんがあれば、きっとみんな喜んで通うだろうと思っていた。が、これは間違っていた。。。


買い出しでは、米、オリーブオイル、ブロッコリーや人参、長ネギ、りんごバナナ、みそ、しょうゆ、豆腐、タコ、卵、豆乳、全粒粉のパン、魚、鶏胸肉、アーモンドなど、極めて低糖質、グルテンフリーの食材を購入。しかもかなり日本食風の食材だ。昆布や佃煮も買っていた。

キャティさんとシルヴァン選手とスーパーへ買い出しに出る。


意外だったのは欧州選手のカーボローディングの定番パスタに見向きもしなかった事だ。私自身も今までカーボローディングはパスタでしていたし、決してネガティヴではなかったと思う。



【徹底したグルテンフリーと砂糖カットのこだわり】

ほうとうはレース前に最適だろうと私は思っていたが、グザビエは白い小麦粉製の製品を一切口にしなかった。


真っ先に名物ほうとう屋さんを紹介したが「その面が白い小麦粉の麺か?」という質問が来て、「うーん、僕は食べない、そば粉の黒っぽい麺があるだろう?それが良いな」との事。 完全に最初はほうとうやでOKだろうと思っていたので、焦る。

急いで蕎麦屋を探すが、ここは河口湖。意外と蕎麦屋がない。


なんとか近所の蕎麦屋を見つけて予約し、全員で十割蕎麦を頼もうとするが、基本付け合わせがかき揚げだ。揚げ物は食べない。

店主にお願いして、とろろ卵だけにしてもらい、かき揚げを差し替えてサラダにしてもらった。蕎麦は大好きだそうで良く食べる。
グザビエはうどんは食べないが、そば粉の蕎麦は好んで食べた。

チームのみんな、そばを喜んで食べてくれた。食事へのこだわりは非常にシビアなので、毎回外食時には検索がめっちゃ大変だった。

この後、外食時の適切なレストラン探しは私の重要かつ難易度の高い任務となる。
その2へ続く…









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