ヨーロッパの都市 -いまパリで目指すべき場所-


パリの中心はいまどこに -シテ島からレ・アール-

昔からヨーロッパの都市の中心には広場があり、広場に面して教会や市場や裁判所などが置かれ、かつては住民たちが一つに集まる中心がそこにあった。パリであれば古くはシテ島のノートルダム大聖堂を中心に人々が集まり、ミサを行い、それぞれがパリという都市に所属意識をもって暮らしていたことが想起される。現代の大都市ではそのような傾向はだいぶ薄れたが、かつての大聖堂のような機能を果たしている場所は一体どこなのか。そう思いを馳せると、毎日最も多くの人が集まる場所は、駅であり、ビルであり、その周辺が中心的役割を担っていることが見えてくる。

 

このシテ島の先端部分に位置するポンヌフ(新しい橋)は、パリで最も古い橋とされ、最もパリらしい美しい橋だが、この橋を北へ向かうと、ちょうど行き当たるのが、現在のパリの中心地と目されるレ・アールという界隈だ。レ・アールは、パリを訪れた人々が街歩きをしていれば大抵行きつく場所の一つで、東京で言えば渋谷のようなイメージに近い場所だ。古くはパリの胃袋と呼ばれ、中央市場があったエリアで、今日では老若男女が集うパリの中心街になっている。

パリのほぼ中心に位置するレ・アールは、郊外からの待ち合わせ場所でもあり毎日多くの人で賑わう。

ヨーロッパでも屈指のメガモール出現 -フォーラム・デ・アール-

パリの為政者たちは大計画と称してモニュメント(大建築)を建設してきた歴史がある。19世紀のパリ改造計画を発端に、パリ万国博覧会など、行事が行われる度に、数々のモニュメントが建てられた。まるでヨーロッパにフランスの偉光を示すかのように、パリの風景や機能を大きく改造してきた。今日でもその流れは留まることはなく、大計画は続き、新たなモニュメントが現れている。その中でも特に大きなプロジェクトが、このレ・アール界隈のリニューアル計画で、巨大な複合商業施設フォーラム・デ・アールの出現がそれにあたる。
 

以前も同様に商業施設があり映画や文化の発信拠点となっていたが、2011年からリニューアル工事を進め昨年2016年に一定の完成を見た。18,000枚のガラスの「葉」に覆われた森に見立てたラ・カノペla Canopée」と呼ばれる鉄骨の大空間が完成したの。日の光によって照らされた巨大なパサージュが実現し東西へ導線もスムーズになった。地上の公園部分を含めた完成は2018年と言われているが、ヨーロッパでも最も大きな複合商業施設の一つが誕生した

ラ・カノペとは天蓋の意。大きく開かれた開口部から地下へと開かれた大空間が広がる。

複合商業施設の娯楽空間 -ファッション、映画、音楽、文学-

フォーラム・デ・アールは、ファッションやグルメの他に、映画館(27スクリーン)から、大型書店や図書館、国立音楽学院やヒップホップセンター、プールまでが揃い、パリの文化や芸術を発信するフォーラムが中心に置かれている。ヨーロッパでも最大級のショッピングモールとなり、商業施設の総面積は15000㎡、店舗数は150店舗に上る。中でも注目を浴びているのは、アラン・デュカスがプロデュースするレストラン・シャンポーCHAMPEAUX」や、フィリップ・スタルクがデザインした文学カフェ・ザ「ZA」など 。

レストラン・シャンポーは、カジュアルな21世紀のブラッスリーをイメージし、午前1130分から深夜1時まで営業。誰もが時間を選ばず気軽に訪れることができるスタイル。座席数も多く予約がいらないこともあり多くの客で賑わいを見せている。シャンポーは美しいクラシックなブラッスリー料理を再現してくれる。


アラン・デュカスはストラン・シャンポーを現代ブラッスリーのオリジナル版として構想した。

出典:http://www.alain-ducasse.com/en/actualites?page=2

また、カフェ・ZAは、モバイルからバーコードを読み取りメニューをオーダーする仕組みや、展示本をコピーしてその場で製本オーダーできるなど、ユニークなサービスで話題性を呼んでいる。こうした新しい場所を訪れ、文学・哲学好きのフランス人の横でお茶を飲みながら、パリっ子たちの時間の過ごし方を真似てみるのも一興だ。

フィリップ・スタルクがデザインしたパリの中心で読書を楽しむカフェ・ZA。

ファッショナブルなショッピングモール -パリの新しい中心-

現在のパリの中心はガラスの天蓋に覆われたこのファッショナブルな商業空間が象徴しているように見え、それは東京の渋谷にヒカリエが出現したのと同じような感覚で人々を呼び込む。電車で郊外からでも直結でき、雨に濡れることなく夜遅くまで仲間とたむろし、ショッピングや食事、映画などのエンターテイメントを存分に楽しむことができる。新しい刺激が大好きなパリっ子にしてみれば、慰みを求めて訪れるにはもってこいの場所だ。

 

こうして新しいモニュメントが現れるにつれて、パリの様相も様変わりしていくが、19世紀にパサージュ(アーケード)が大流行したという歴史を振り返ると、フォーラム・デ・アールはそれの延長線上にあるように思え、当時のパリの生活者と変わらない欲求や夢を満たすために現れたようにも見える。これから長い年月をかけて、この商業空間がパリの住民たちの中に浸透していき、一つの中心として新たな都市の記憶が紡ぎ出されていくのだろう。訪れる旅人もまた新たなパリの風景を記憶の中にきっと残していくのだ。


フォーラム・デ・アールは外にいるようで内にいる両義的な空間。人が集う中心であると同時に通過の回廊にもなる。
出典: http://forumdeshalles.com/centre








ヨーロッパ周遊旅行の専門店 ユーロエクスプレス
ユーロエクスプレス

  • ヨーロッパ 都市
  • ヨーロッパ 旅行
  • ヨーロッパ 観光
  • フランス旅行
  • パリ観光