極地への大冒険(北極という奇跡の場所)


 

かつて北極といえば、冒険家しか行けない未知の場所でした。砕氷船に乗った強靭な男たちが極寒との戦いに挑む…そんなイメージをお持ちの方もいるのでは?しかし、現在の北極は全く違う様相を呈しています。誰でも気軽に訪れ、自然の驚異と素晴らしい景観を堪能することができる場所となっています。旅行の目的地の一つとして「北極」を検討できる時代が既に訪れています。ただ、地球温暖化によって北極の氷は危機的な状態にあり、数年後には行けなくなってしまうかもしれません。行くならまさに今なのです。そんな北極を訪れるクルーズとは。


 

北極の玄関口ロングイェールビーン

 

日本からはスカンジナビア航空で、コペンハーゲン、オスロを経由し、スピッツベルゲン島の空港ロングイェールビーンへ向かいます。スピッツベルゲン島はノルウェー領スヴァールバル諸島最大の島。 同諸島で唯一の有人島であり、面積は 37,673 km2、海岸線延長は 3,919 km(九州島とほぼ同じ面積)になります北極への玄関口となるロングイェールビーンは、かつて炭鉱で栄えた町です。炭鉱を訪れるツアーもあり、炭鉱マンの作業服を着て、廃坑となった炭鉱内部を探索します。デザインの国ノルウェーの領土ということもあり、建物はカラフルでスタイリッシュです。島内にはスーパーの「コープ」やタイ料理のレストランもあります。ここには「Sushi KITA」という日本料理レストランまであります。こんなに離れた場所で逞しく生活されている日本人を見ると、なんだか勇気づけられます。なお、北欧といえばの物価の高さはここでも顕在です。

 

 


乗船するクルーズとは

 

北極へ行くクルーズ会社は幾つかありますが、今回は昨年乗船したワンオーシャン社のクルーズをご紹介します。クルーズに使用される船は、ロシアの飛び地カリーニングラードで造船された砕氷船「アカデミック・サージ・バビロフ号」。乗船人数約100名で狭い湾にも小回りが利き、極地に最適な船です。静かで安定性の優れた耐氷船です。ギフトショップ、フィットネスルーム、マッサージルーム、スパ、サウナ、小型海水プール、ホットタブがあります。最上階のバーラウンジからは素晴らしい景観が見られます。操舵室にも入ることができます。氷を割りながら進む光景は圧巻です。船員はロシア人ですが、ワンオーシャンのスタッフは国際色豊かな専門スタッフです。医師も乗船しています。スタッフはプロ意識が非常に高いので、どんな状況でも安心できます。スタッフによる専門的なレクチャー(例えば、北極に生息する動物の話や、北極の環境の変化についてなど)があったり、夜にはちょっとした小話(体験談)などを披露してくれたりもします。


 

 

クルーズ中の生活

 

キャビンは2~3名1室が基本で、1人参加の場合は相部屋になる可能性が高いです(もちろん同性を考慮してくれます)。上階ほどグレードが高く、料金も高くなっています。食事は全て付いています。これが美味しい!参加者はグルメな方が多かったと思いますが、皆さん料理には大満足でした。ロシア人シェフが腕を振るってくれます。これほどの食材が船に入っていることが驚きです。参加者は100名ほどで、自分の参加時は見事に英語圏の人(アメリカ、英国、オーストラリア、ニュージーランド)がほとんどでした。下手な留学よりもよっぽど英語力が鍛えられます。


 

 

いよいよ北極への冒険がはじまります


乗船するとすぐに避難訓練がおこなわれます。その後はバーラウンジで簡単なレセプションがあります。ウェルカムドリンクと机の上には大量のエビ。スタッフから「冒険の開始」が伝えられると、参加者からは雄叫びが起こりました。皆さんとても興奮しています。実は、この北極クルーズは通常の旅行のようにルートが決まっていません。それはなぜか?自然の姿はその時の状況で全く変わってしまいます。野生動物もどこに現れるかわかりません。スタッフは毎日どこが一番ベストなポイントかを吟味し、ルートを組みます。その瞬間の旬を提供してくれるのです。自分が参加したルートはその時だけのオリジナルのもの。次回参加したら、また違った旅となるのです。


 

今回のルート

 

2016年7月14日に出発した船は、翌日15日Brepollenに到着。最初のゾディアッククルーズ。マッドエリアでまるで宇宙服のような防寒着に着替えます。これが慣れないうちは一苦労。ゾディアックボートは結構スピードが出るので、防寒対策をしていても寒さが堪えます。まさに冒険のはじまりといったところ。初めて見る氷河は青白い色をしていて、どこまでも広がる壁のようです。普段の生活では絶対に見られない光景に、映画でも見ているような錯覚に陥ります。


 

7月16日は霧がひどく、午前のゾディアッククルーズが中止。落胆する参加者たちに「白くま発見」のアナウンスが!参加者のボルテージは一気に最高潮に。遠くの山を双眼鏡で見ると、確かに白くまの姿が見えます。午後からはFreeman Soundへのゾディアッククルーズに出発することもでき、この日は全部で11頭を目撃することができました。


 

7月17日は早朝から Alkefjelletへのゾディアッククルーズで海鳥が群生する場所へ。そそり立つ崖には無数の海鳥がコロニーをつくっていて、静まり返った空間に海鳥の鳴き声だけが永遠と響き渡っています。よく見ると海鳥の卵を狙う北極ギツネの姿も。海の色は濃いコバルトブルーで、それだけでも十分に美しい。午後のゾディアッククルーズでは2頭のベルーガを発見。かなり長い間、固唾を呑んでベルーガの優雅なダンスを観察しました。この日は初めてのSorgfjordへのランディングも。30年前にロシア領だった場所を散策。久しぶりの地面に興奮しました。


 

7月18日ついにスピッツベルゲンを離れてアイスと呼ばれる北極へ。船から見る景色も流氷ばかりになり真っ白い世界へと変わっていきます。流氷の上に白くまを発見。かなり近距離で見ることができました。さらに別の白くまも。なんとこの白くまは立ち上がり、海の中に飛び込みました。参加者たちは大興奮!「スタンディングベア」「ジャンピングベア」と大騒ぎです。この日は1日この白くまの話題で持ち切りでした。


 

7月19日アイスからスピッツベルゲンに戻る。午前からゾディアックが出るはずだったが、強風と霧のため中止。急遽参加者の一人であるナショナルジオグラフィックのカメラマンであるイスラエル人のバルトフさんによる「イスラエルの動物たち」についてのプレゼンテーションが開催されました。こういう思いがけないことを知る機会がもてるのも北極クルーズならでは。15時から天候が好転し、Phippsoyaへのゾディアッククルーズでセイウチを見に行く。十数頭のセイウチが岸辺に固まってのんびり時間を過ごしていた。海からひょこり顔を出して泳いでいる姿も見られます。また、この日も「白くま発見」の朗報が!ゾディアッククルーズで向かうと、岸辺を北極の王者白くまがスタスタと歩いています。ボートと白くまの距離は10mぐらいでしょうか。非常に近距離で白くまを見ることができました。当然参加者たちは大興奮。白くまから離れるまで、シャッター音は鳴り続けました。セイウチにしても、こんな大きな生き物が普通に生きているのだということに感動を覚えます。


 

7月20日早朝からSallyhamnaへのゾディアッククルーズがスタート。北極の人気者パフィンを見に行きました。顔がユーモラスでとっても可愛らしい鳥です。途中でアザラシにも出会えました。この日のSmeerenburgへのランディングは散策をしながらのゴミ拾い。北極クルーズは自然を守る意識、環境について個人レベルで考えるきっかけを与えてくれます。極地であるスピッツベルゲン島にも、漁で使われたと思われるゴミやペットボトルなど、残念ながら幾つものゴミが流れついていました。地球の環境について考えさせられます。夕方、船のデッキでBBQパーティが催されました。とても寒かったですが、焼きたてのお肉も美味しく、参加者も旅の思い出話に華を咲かせていました。


 

7月21日この日は早朝からBloomstrandhalvøya-Ny Londonへのランディング。ほとんど動かないチーム、ショートコース、ロングコースの3チームに分かれてのハイキング。小高い丘を4時間かけて歩き、湖に飛来する鳥を見てゴール。それにしてもご高齢の参加者も非常にパワフルで、ロングコースに参加している人もいます。英語圏の方々のタフさとチャレンジ精神には感服です。水着を着てきた人は極寒の海を体験!スタッフの一人の女性も豪快に海に向かっていきました。参加者からは拍手喝采です。午後は14 th July Glacierへのゾディアッククルーズでパフィンとアザラシに遭遇。巨大な氷河を見て、自然のダイナミズムを感じました。本当に現実にある世界とは思えません。途中でホットチョコレート(ブランデー入り)のサービスがあり、カヤックチームと合流。海上でくつろぎのひとときです。


 

7月22日早朝4時に起床。Poolepyntenへセイウチのコロニーを見に行きました。数十頭のセイウチが団子状態に塊り、のんびり寝ています。参加者は2チームに分かれて観察。20人ぐらいで手をつなぎ、そっとセイウチに近づいていきます。セイウチたちはお構いなし。気付かないのか、気付かないフリをしているのか・・・ずっと寝たままです。ふいに1頭のセイウチが海から上がってきました。仲間の中に入っていき、やがて何事もなかったかのように寝てしまいました。近距離で見ると、その体の大きさに驚きます。ユーモラスな雰囲気で魅了されます。すっかりファンになりました。最終日なので、夜、スタッフたちが「旅の上映会」を開催。こんな写真も撮っていたのかと驚いたり、出会った動物たちの愛くるしさに幸せな気分になったり…。いよいよ長かった旅も終わるのかと思うと、ちょっと目頭が熱くなります。最後は参加者全員の気持ちが一つになりました。

 

7月23日冒険の終わり…北極の思い出を胸に、各々の国へ、現実の世界へ旅立っていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 


 

 


 

 


 


 

 








ヨーロッパ周遊旅行の専門店 ユーロエクスプレス
ユーロエクスプレス

  • 北極
  • スピッツベルゲン
  • スヴァールバル諸島
  • クルーズ
  • 白くま