世界一の長さを疾走するシベリア鉄道


 

シベリア鉄道と聞けば、旅情あふれる車内を想像する人も多いのでは。東端のウラジオストクからロシアの首都モスクワまで行くと、地球を1/4周することになります。ノンストップで走り抜けても1週間かかります。その距離の長さを考えると驚くばかりですが、なぜかチャレンジしてみたいという気に駆られてしまいます。そんなシベリア鉄道の魅力をお伝えしたいと思います。

 

 

シベリア鉄道のクラス

 

シベリア鉄道は3つのクラスに分かれています。一番安いのは3等(プラツカルトヌィ)です。開放寝台といわれている3等車の車両内は、コンパートメントに分かれていません。ベッドの関係で仕切り壁はありますが、ドア側の壁はありません。乗客をよく見渡せます。廊下を挟んだ窓側にもベッドが付いています。「ロシア人からは3等は危ないから2等にしなさい」とよく怒られましたが、個人的には3等が一番快適です。2等(クペー)は4名1室のコンパートメントです。現在は性別を考慮してくれる場合もあるようですが、以前は全く関係なしの相部屋でした。ロシア人のエチケットとしてクペーで乗り合わせた人には話しかけるというものがあるのかどうか…よく話しかけられます。現地の人との交流を楽しみたいなら、絶対2等がお勧めです。初めてシベリア鉄道に乗車したとき、自分以外はロシア軍の兵士たちという状況でした。夜は大量のビールとオームリ(バイカル湖に生息する魚)の燻製で飲んで食べての大宴会という強烈な経験となりました。とても良い思い出です。ただ、一人で静かにしていたい場合には3等のほうが気が楽です。2等のように運命共同体と認識されないので、みんな放っておいてくれます。1等(リュクス・スヴェー)は2名1室のコンパートメントです。二人でゆっくり旅行を楽しみたい場合は1等です。また、2等以下の場合は2段ベッドなので、上段になる可能性もありますが、1等は必ず下段なので、そういう意味でもお勧めです。

 

 

シベリア鉄道での食事


何日も乗車することで、心配なことの一つに食事があると思います。食堂車が付いている場合はぜひ試してみてほしいのですが、「料金が高いわりに…」といった声もちらほら聞きます。ロシアの人々はどうしているかというと、自前のお弁当やフルーツを大量に持ってきている方もいますが、多いのはカップ麺です。乗車前にスーパーで購入。駅のキオスクなどで売っていることもあります。車内にはロシアならではの湯沸かし器(サモワール)があるので、お湯は無料で手に入ります。生ものは長時間常温に放置することになるのでお勧めしません。カップ麺は腐ることがないのでもってこいです。プラスチックのコップとティーパックなどを持参すれば、いつでも飲み物を飲むことができます。また、駅のホームで売り子さんがピロシキを売っていることもあります。バイカル湖付近では前述のオームリの燻製を売りに車内に入ってくることもあります。ここならではの食べ物なので、ぜひ食べてみてください。とても美味しいのですが、数日間コンパートメントに匂いが残ることは覚悟しておいてください。


 

シベリア鉄道のルート

 

停車する主要都市としては、先ずロシアの軍港都市ウラジオストク。東京から直行便で約2時間。一番近いヨーロッパといっても良いのでは。港町なので海からの風が強く、独特の風情があります。ハバロフスクは極東最大の町です。アムール川が流れ、ロシアらしい教会もあり、お洒落な雰囲気が漂います。週2便、東京からの直行便もあり、3時間程度で行くことが可能です。ナナイ人の村やユダヤ人自治州都ビロビジャンなど日帰りで行ける興味深い場所がいくつもあります。ウラジオストクとハバロフスクの間はオケアン号という寝台車も走っています。

その後、しばらくシベリアの大地が続きます。ハバロフスクから2泊3日後に到着するのがウラン・ウデです。元々モンゴルの一部だったこともあり、ここにはブリャート人という、一説によると日本人と一番DNAが近いといわれている人々が暮らしています。実際には住民の6割はロシア人なのですが、日本人が歩いていても、そんなに目立ちません。また、ブリャート人はチベット仏教を崇拝していて、郊外にはイボルギンスキーダッツァンというカラフルなお寺も建っています。ウラジオストクやハバロフスクとはだいぶ違った印象を受けるでしょう。広場には世界一大きいといわれるレーニンの頭部像があります。かつて戦時中には日本との緩衝国家としての極東共和国の首都だった場所でもあります。シベリア抑留者が建設したといわれる劇場もあり、何かと日本とのつながりが深い都市です。

その後、バイカル湖沿岸を通ります。ここがシベリア鉄道の車窓のハイライトといえるでしょう。バイカル湖の大きさには圧倒されます。夏の人気の観光地であるバイカル湖ですが、冬もお勧めです。冬にはこの海のように大きいバイカル湖の湖上が凍り、その上を車が通れるまでになります。世界一の透明度といわれるバイカル湖の氷は本当に美しいです。バイカル湖を抜けると、イルクーツクがあります。シベリアの真珠ともいわれるイルクーツクは、独特の木造建築も見られる、とてもシベリアらしい町です。

その後の大きい都市としては、ノヴォシビルスクがあります。ノヴォシビルスクは学園都市です。日本でいえば筑波のような町です。モスクワへ行く途中でウラル山脈を抜けるところにエカテリンブルクがあります。ウラル山脈から東側がアジア、西側がヨーロッパといわれていて、ここにはその境界を示すモニュメントもあります。ロシアはマヨネーズが美味しいと評判なのですが、エカテリンブルク産のマヨネーズはとても人気があります。いよいよ終点のモスクワ…の手前にニジニ・ノヴゴロドがあります。ロシアのお土産で有名なものはほとんどここで作られています。また、成層圏フライトの飛行場があるのもここです。そして、終点、誰もが知っているロシアの首都モスクワで下車となります。途中にたくさんの魅力的な都市があるので、できればノンストップではなく、途中の町に宿泊しながらシベリア鉄道を楽しんでいただきたいです。

 

 

インペリアル号

 

通常のシベリア鉄道の他にも、同じルートを豪華列車が走っています。インペリアル号は2014年からロシア国鉄が運営を始めたラグジュアリートレインです。そのため、後述のゴールデン・イーグル号に比べて料金がお安くなっています。ファーストクラスツインで1名あたり約70万と決して安いとは言えませんが、ゴールデン・イーグル号の1/3くらいの料金で豪華列車を楽しむことができます。個室にはシャワーがあり、2つある美しい食堂車での食事も付いています。各都市での観光や車内でのイベントもあり、とても快適にシベリア鉄道の醍醐味をお楽しみいただけます。前述した都市の他にカザンにも停車します。カザンはタタール共和国の首都で、街並みも独特な雰囲気があり、大変興味深い町です。


 

 

ゴールデン・イーグル号

 

超豪華列車として不動の位置を誇るゴールデン・イーグル号。重厚で美しい車両を機関車が牽引します。動くフォー・シーズンズホテルといったところでしょうか。個室はシベリア鉄道の列車の中でも最大級。車内ではシャンパンが出され、ロクシタンの香水も用意されています。24時間無休体制の接客サービスも付き、医師も同乗しているので、何かあった場合でも安心です。シルバークラス、ゴールドクラス、インぺリアルスイートがあり、車が1台買えてしまうくらいの費用がかかります。当然、ウラジオストクとモスクワの宿泊は最上級のホテルです。列車への乗車前日にはウェルカムディナーも付いています。ゴールデン・イーグル号のシベリア鉄道横断ルートでは、モンゴルのウランバートルに立ち寄ることもポイントです。カザンにも停車します。ちなみに、ゴールデン・イーグル号のルートはこれだけではありません。冬のオーロラに合わせて、カレリア地方を通り、ヨーロッパの最北端ノルウェーのキルケネスに行くルートや、ウズベキスタンなどのシルクロードを通るルート、バルカンを旅するルート、年末年始のイベントに合わせた中欧のルートなど、魅力的な多様なルートがあります。中には100万以下のものもあるので、とにかくゴールデン・イーグル号に乗車してみたいということなら、他のコースを探してみるのも良いかもしれません。なお、運営しているのは英国の会社です。車内ではルーブルではなく、ユーロまたはドルでの精算となります。インぺリアル号ともども観光ガイドは英語となりますが、ロシア内の各都市では日本語ガイドの手配も可能です。ぜひ一生に一度の贅沢をしてみてはどうでしょう。その素晴らしい体験はプライスレスです。



 


 


 

 

 








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