西洋料理のうま味(Umami)を求めて -マルセイユの伝統料理ブイヤベース-


前回のヨーロッパ旅行 -西洋料理の深いうま味(Umami)を探す旅-に引き続きブイヤベースのうま味(Umami)の秘密についてご紹介していく。日本料理とフランス料理では、うま味(Umami)の考え方が異なり、文化の違いが料理を変え、うま味を変えていたことに触れたが、料理の歴史はうま味の歴史とも言えそうだ。


ブイヤベースの歴史と語源について

フランス料理のブイヤベースは、ロシアのボルシチ、中国のフカヒレスープ、タイのトムヤンクンと並び、世界三大スープの一つとして数えられる魚介スープ。フランス料理の長い歴史の中でも、最も古い伝統料理の一つであり、南仏はマルセイユの名物だ。


マルセイユは紀元前7世紀頃からギリシャ人によって開かれた港町で、元来、地元の漁師たちが売れ残った魚や、売り物にならない魚をごった煮にしたのがそのルーツとされている。
ブイヤベース(bouillabaisse)の語源は「煮込む(bouillir)+弱める(abaisser)」となり、語源についての議論の余地はあるものの、煮立ったら煮崩れしないように火を弱めるというのが妥当と見える。


マルセイユ憲章とマルセイユのソウルフード

マルセイユでは、この伝統の味を守るために1980年にブイヤベース憲章を作り成文化。本物のブイヤベースを観光資源として大切に守っている。この憲章を掲げるレストランでは、公認レシピとして本物のブイヤベースを味わうことができる。


この憲章の目的は、良質なブイヤベースを規定し伝統料理をより良く知らせるため、そして、その味をプロの芸術として尊重するため。マルセイユ住民にとってブイヤベースとは、元々は家庭的な素朴なスープであり、言わば古の先祖たちから受け継いだソウルフードだ。これに洗練を重ね、立派なフランス料理に仕立て上げた。


本物のブイヤベースの作り方とは

本場のブイヤベースの素材としては、意外にも海老類、貝類、タコ、イカは用いない。また、地元の港に水揚げされた地中海の岩礁にいる地魚を使うことにこだわる。ムール貝やオマール海老などは使わないのが本流だ。


魚は出汁を取る小魚とは別に、メーンとなる大きな魚として、カサゴ、マトウダイ、アナゴ、ホウボウ、毛足ガニ、アンコウなどの中から4種類以上を使用しなければならない。数種類の魚のうま味を重ね、より複雑なうま味を引き出そうとしているわけだ。


下準備では、日本では見られない小魚など、決められた十種類ほどの魚を輪切りにし、たまねぎ、トマト、フェンネル、パセリ、にんにく、オリーブオイル、サフラン、塩、胡椒を加えて1時間ほど煮る。それをミキサーにかけて裏ごし器でこして出汁を作る。


仕上げには、出し汁の中にじゃがいもと、先に挙げた大型の魚4種以上を入れて、20分ほど煮る。供する5分前にホウボウと毛足ガニを加え、調理が終わったら、
じゃがいもと魚を取り出してスープと分ける。


伝統のブイヤベースのいただき方とは

伝統のブイヤベースでは、食べ方の原則として、2つの皿に取り分ける決まりがある。一つはスープ、もう一つは魚。また基本ルールとして魚は顧客の目の前で切り分けられる。またルイユとクルトン(パン)が添えられる。


ルイユは南仏で定番のアイオリ(ニンニクマヨネーズ)に、唐辛子、サフランを加えたソース。このソースをクルトンに載せ、スープに浮かばせる。クルトンにスープが浸透し、ソースとスープが溶け合うと、スープにまろやかさが加わりうま味を増す。マヨネーズ好きはお好みで調整。


地中海のうま味、ブイヤベースはおふくろの味

マルセイユの旧港(Vieux-Port)は、現在はクルーザーやヨットが並ぶヨットハーバーになっているが、朝は魚市場で賑わう。その港をコの字に囲むようにしてレストランやホテルが軒を連ね、旅人に名物のブイヤベースを提供する。もっともブイヤベース憲章がなくとも、それぞれ独自のブイヤベースを供してくれるので、伝統にこだわらず安くて美味しいブイヤベースにありつけるはず。


こうしてマルセイユの各家庭で作られた素朴な魚介スープは、実は祖母から母へ、母から娘へと伝わる伝統のスープであり、先祖代々伝わるおふくろの味とも言えるだろう。
その深いうま味(Umami)の秘密は、紛れもなく豊富な地中海の海の幸のうま味と、新鮮な野菜のうま味を掛け合せたものだが、何より経験的な知恵から作られたおふくろの味、身体にやさしい素材とうま味がその美味しさの根幹にあると思うのだ。

以下に伝統のブイヤベースが味わえる店の一部をご紹介。中には秘伝のブイヤベースの作り方を学べる料理教室を催す店もあるので、詳しくはマルセイユ観光局などをご参考に。ヨーロッパ旅行で南仏を訪れる際は、この地中海の美味ブイヤベースを食することをお忘れなく。

MIRAMAR(ミラマール)*料理教室あり
http://lemiramar.fr/
CHEZ FON FONシェ・フォン・フォン)
http://www.chez-fonfon.com/
PERON(ペロン)
http://www.restaurant-peron.com/

レシピ参考 
https://www.starchefs.com/bouillabaisse/html/french/recipe_01.shtml
マルセイユ観光局
http://www.marseille-tourisme.com/

 








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