【フランスとSakéのマリアージュ|フランス日本酒事情】



独自の食文化を持つ国、フランス、日本

フランスは言わずと知れた美食の国。

「フランスの美食術」という題名で、2010年、ユネスコの無形文化遺産にも登録されました。これはフランスにおける食が、生活における最も重要な時を祝うための社会的慣習であり、またそれを継承するための習慣や教育が定着していることが評価されたようです。

フランスに遅れること3年、日本の「和食」もまた同様に、無形文化遺産の仲間入り果たしました。遠く離れたふたつの国は、「食」に関して、共通する高い意識を持ち合わせていると言えそうです。

 



フランスにおける日本酒ブーム

そんなフランスで数年前からムーヴメントを巻き起こしているのは、日本の国酒である「日本酒」。フランスではもっぱらSakéサケと呼ばれています。

しかし、これまでフランスでは、中華料理店が提供するアルコール度数の高い中国酒のことをSakéと呼んでいたため、Sakéが本来の「日本酒」として認識され始めたのは、ごく最近のこと。日本酒がフランスで正しい評価を得るには、この大いなる誤解を解くことから始めなければなりませんでした。

本来、醸造酒である日本酒は、ワイン同様、薄暗い場所で低温管理され、開栓後は早めに飲みきるのが理想。それが「Saké=蒸留酒」という誤解のせいで、ブランデーのように、開栓後何年も常温下に留め置かれるということがままありました。これではデリケートな日本酒はひとたまりもありません。

 

こういった事情には、正しく発信してこなかった日本側にももちろん責任があります。国酒である日本酒に対して、造る側も味わう側もあまりに無関心な時代が長く続きました。しかし、2013年、政府主導で「クールジャパン」戦略が立ち上がり、「和食」の無形文化遺産登録も追い風となって、日本酒への注目度がじわりと上昇。

おりしも国内の酒造メーカーでも世代交代が行われ、若い後継者たちによって新風が吹き込まれていました。目利きのスターシェフやソムリエが、この格段にモダンになった日本酒を自身のワインリストに載せたことも、フランスでのSakéの認知度が高まる要因となりました。

財務省の統計によると、2016年度の日本酒の輸出量は、全体で11%増、対フランスにおいてはなんと40%増を記録したといいます。


2017年は日本酒革命年!

そして2017年は、フランスと日本酒の関わりにおいて、革命的な出来事が続いた年でした。
まずひとつは、史上初のフランス産日本酒の完成2016年オーヴェルニュ・ローヌ・アルプ地域圏の町ぺリューサンPélussinに開業した「昇涙酒造」が、地元の水と日本から輸入した米とで醸したものです。日本酒に魅せられて来日、酒蔵で修業を積んだGrégoire Boeufグレゴワール・ブフさんが、日本から杜氏を呼び寄せての共同作業。「フランスの水と日本の伝統技術の融合」と、胸を張る出来となったようです。

 

もうひとつは、南フランスはカマルグ産の米で造った日本酒CAMARGUEに生まれて、」の発売。愛知県の萬乗醸造が、フランス固有種であるマノビManobiという米を、現地の農家の協力のもとに栽培し、日本に送って製造したものです。南仏の太陽をさんさんと浴びて育ったフランス米と、日本の水、そして技術。本数は多くなく、720ml 5000円と値段は少々はりますが、見つけたらぜひ味わってみたい一品です(かくいう私も、冷蔵庫に1本保管中です)。

   
カマルグの田んぼ。フランス唯一の米穀地帯


カマルグはフランス有数の湿原地。白い馬が疾駆する

2017年はまた、フランスで初めて、フランス人によるフランス人のための日本酒コンクールKura Master蔵マスター」が行われた年でもありました。

フランスの歴史的食文化である「料理とワインとのマリアージュ」を日本酒におきかえ、フランス市場で日本酒をアピールするために開催されたこのコンクール。厳正なるブラインドテストにより、日本からの総出品数550本の中から、上位33%が受賞しました。フランス国内のレストランやショップで、これまで以上に日本酒を目にする機会が増えそうですね。

 

さらなる飛躍の年に

さて、明けて2018年。

5月には日本中の田んぼに水が張られ、田植えが始まります。今年はどんな米が実り、どんな酒Sakéが造られるのでしょうか。そして、昨年確かな形となったフランスと日本酒の融合が、今年はどのように進化し、表出するのか。日本酒とフランスをこよなく愛する私としても、楽しみでなりません。

おりしも今年は日仏友好160周年!7月からパリを舞台にJaponismesジャポニズム2018というイベントが大々的に繰り広げられます。「日本の食と文化」に関するイベントも目白押し。もちろん、日本酒を紹介する企画もありますよ。こちらについても、今後のブログで発信していきたいと思います。どうぞお楽しみに!!

 








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