【モーゼルワイン街道をめぐる~ドイツ、フランス、ルクセンブルグ】


 

皆さんは、「モーゼルワイン」と聞いたら、何を思い浮かべるでしょうか?

その名の由来ともいえるモーゼル川は、ドイツ、ライン川の最大の支流にして、その源はフランス、ヴォージュ山脈。全長約560キロメートルのうち、314キロがフランス、39キロがルクセンブルグとドイツの国境、残り208キロはドイツ国内を流れる、いわば三国を股にかける国際河川です。そのくねくねと蛇行した姿は、女性らしい曲線美とも、「酔っぱらいのように」とも例えられ、古くから人々を魅了する存在でした。

 
大きくカーブするモーゼル川。両岸は日当たりのよいブドウ畑に

ドイツ国内では、フランスとの国境の村ペルルから、ライン川に合流するコブレンツの町まで、川沿いの丘陵地帯に古くからブドウ畑が広がり、中世の町並みや古城などの風景とともに、美しい「モーゼルワイン街道」が形成されています。

この地に植えられている品種は主にリースリング。爽やかな酸味が持ち味の、はつらつとした白ワインができあがります。ドイツの他の銘醸地ラインガウのワインが、「貴婦人」に例えられるのに対し、モーゼルのワインは「山の娘」。一般に「モーゼルワイン」というと、ドイツのこの地方で造られる白ワインが想起されるのではないでしょうか。

 

モーゼル川を挟んでドイツと国境を接するルクセンブルグも負けてはいません。

対岸には、ドイツ同様、斜度60度はあろうかという切り立った丘陵地が広がり、ブドウ畑をなしています。栽培品種はミュラー・トゥルガウ、オーセロワ、ピノ・グリ、リースリングなどで、単一品種で造る白ワインが主体。同じモーゼル川沿いでも、ドイツモーゼルが比較的糖度を残して仕上げるのに対し、ルクセンブルグモーゼルはすっきりと辛め。日本ではまだなかなかお目にかかれませんが、何せルクセンブルグはワインの消費大国。2015年にバチカン市国にその座を奪われるまで、国民1人当たりのワイン消費量No.1だったのです。おのずと輸出量が少ない、ということなのでしょうね。

 
モーゼル川に架かる、ルクセンブルグとドイツを結ぶ橋

さて、モーゼル川の源流、フランスにモーゼルワインを尋ねてみましょう。

古くローマ時代からワイン製造が行われていたのは、ドイツ、ルクセンブルグと同じ。ただ、19世紀に起こった病害虫の被害や、モーゼル川流域の鉄鋼業などの産業化、また南仏ワインとの競合のなかで、この地のブドウ栽培は急激に衰退してしまいました。3万ヘクタールあったとされる栽培面積は、19世紀末には300ヘクタール余り、そして1985年には3ヘクタールまで激減。まさに風前の灯でした。

ところが昨今、鉄鋼業の斜陽とともに再び勢いを取り戻しつつあるのが、このフレンチモーゼルなのです。現在、栽培面積65ヘクタールまで回復、2010年にはフランス最北のAOC(原産地呼称)として「AOCモーゼル」が誕生しました(初ヴィンテージは2011年)。このうち、約半数がビオロジック(有機栽培)とのこと。

フランス側のモーゼルは、主に赤はピノ・ノワール、白はオーセロワとピノ・グリの品種からなっています。特筆すべきは、やはり白。一般に酸味がおだやかで、やさしい味に仕上がるとされるオーセロワですが、この地のそれは、非常に個性的で、意外性にあふれています。良い意味で、「オーセロワ」の固定概念を覆してくれる白ワインと言えそうです。

 
国境の町、シエルク・レ・バン。ワイン街道をなすフレンチモーゼルの産地

2012年には、ドイツとルクセンブルグの国境からつながるモーゼルワイン街道Route des vins de Moselleがフランス側に開かれ、翌年には25キロを延伸。メッスの町の周囲までつながる一大ワイン街道が完成しました。加えて2014年からは、街道沿いの町で、モーゼルワイン祭りFête des vins de Moselleが毎春開催されています。これにはドイツとルクセンブルグの醸造家も参加し、フレンチモーゼルのプロモーションのみならず、広くモーゼルワインをアピールする場となっています。

 
フランス、メッスMetzもモーゼル川の恵みゆたかな町

こうして、「モーゼルワイン」を巡って、三国が協同する土壌がととのいました。

世界的な評価も、知名度も、まだまだドイツモーゼルの独壇場ですが、品質の点では、ルクセンブルグもフランスも負けてはいません。「まだあまり知られていない、とっておきのワイン」を探すなら、うってつけのエリアだと思います。

それぞれの個性を確かめに、モーゼル川をフランスから下ってみるのも面白いかもしれません。せっかくなら、モーゼルワイン祭りの時期に合わせるのも一案。4月末~5月初頭にはフランス側のワイン街道の村で、6月初旬にはドイツ、コッヘルで、そして、8月末~9月初頭には同じくドイツ、ベルンカステル・クースで、にぎやかにワイン祭りが開かれます。ルクセンブルグにおいては、小さな国ながら、2月から10月まで、ほぼ毎月のようにワイン祭りが開かれています。特におすすめなのは、8月、レミッシュの町で行われる「バッカス祭りFête du Bacchus」。ブロカント(骨董市)とワイン祭りに音楽フェスをミックスさせたような、盛りだくさんのイベントです。

 
中世の木組みの家が立ち並ぶベルンカステル・クース。モーゼルワインの一大産地

川と土の織り成す風土と、人の営みの結晶、ワイン。モーゼル川のたゆたいを眺めながら、その土地の愛すべき一杯を味わえたらなんて素敵だろう……。これを書きながら、スタッフの思いはすでに彼方へと飛ぶのでした。

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