花を生活に取り入れると生活の質は変わるだろうか? 特に日本男性にとって花は縁遠いという人も多いかもしれないが、例えば西洋では古代からフラワーアレンジの起源を発し、花を贈る文化が根付いている。今回は日本とフランスの花に対する価値観の違いと、その文化を学ぶフラワーアレンジメントの旅をご紹介。
人生に花がある生活とない生活、どちらがお得?
フランスではバレンタインデーに男性から女性に花束を贈る。日本では女性が男性にチョコを贈る習わしが長く続いてきたが、最近ではフラワーバレンタインと称し日本でも男性から花を贈る機運を盛り上げようと花屋業界が動き始めているそう。
花屋モンソーフルールは、1965年パリのモンソー公園近くの17区、家族経営の花屋から始まった老舗の花屋チェーン。2007年から日本にも進出していて、同店のコンセプトには「パリジャンのように花を選び、花で自分らしさを演出する」とある。
モンソー公園は筆者もフランス留学中にしばし通った公園で、芝生に寝転がって本を読む若者、ベンチで語らう老人、夕日に向かってそぞろ歩くマダム達、そんな光景が広がる8区と17区の界にある花の公園だ。
1965年当初、花を購入したのはパリ8区のブルジョワジーのみとされたが、現在では誰でも5€からと低価格で花を買うことができる。パリではこうした花屋が花の民主化に寄与したようだ。日本でもその流れが近年始まっているとすれば、実に半世紀を経てようやくその流れが変わろうとしているのかもしれない。
花を贈る機会が多いとされるフランス男子
古くから花は女性のイメージと重ねられ、文学や芸術の中で重要な役割を担って来た。星の王子様ではバラの花は愛の象徴とされ、ポスターで人気を博したミュシャのデザインにも女優サラ・ベルナールを彩る花のあしらいが多用されている。花の都パリもまたその象徴とされていた。
日本でも花好きの女性は多いが、男性が花を積極的に買い求めるフランスは日本と大きく異なる。フランス男子なら、2月14日のバレンタインデーを皮切りに大切な人にバラを贈り、5月1日(愛の日)にはお世話になっている人達にスズランを、5月最終日曜日の母の日には母親にブーケをと女性に花を贈り続ける。
純粋に大切な人を喜ばせるためか、半ば強制なのか、花を贈らなかったらどうなるかは知らないが、とにかく花の記念日になると、パリジャンは花屋に駆け込むという。こうしてフランス男子は、花を贈ることで自分の気持ちを表現することを経験的に学んでいくようだ。
春を迎え生活の中にブーケを飾るフランス
春を迎え、どんよりと重たい冬が終わりを告げると、春を待ちわびた花と緑が芽吹き始める。フランスでは冬が長く厳しいためか、春の光の到来は日本よりも遥かに嬉しく感じる。草木にとってもそれは同じで、春の光を受けた花と緑は、より鮮やかな印象を持って映る。
4月から5月のこの時期、街角に咲き誇る花とともに花屋の仕事も忙しくなる。フローリストがあしらったブーケを飾るショップ、ホテル、レストランほか、あらゆる場所の背景に美しい花の装飾を目にすることができる季節だ。
フランスの花屋はファッション業界とも関係が深く、一流フローリストとなれば作家として有名メゾンのデザイナーとコラボレーションすることもしばしば。サービス産業を中心に、各店お抱えのフローリストたちが、季節の花の癒しを住民に届けてくれる。
また一流フローリストの中には男性フローリストが数多く活躍している。日本ではまだ男性フローリストが少ないはずだから、男性が花をアレンジできることの先行者利益は小さくないかもしれない。無論、喜んで受け取ってもらえる相手が必要だが、ブーケを作って人を喜ばせることができたら素敵だと思う。
花の都パリ、本場フラワーアレンジメント体験
フランス現地では、フラワーアレンジメントの体験レッスンも数多い。日本でも女性を中心にトレンドとなっているが、新しい体験を求めて本場フランスのフラワーアレンンジメントを学ぶのはどうか。初心者からでも体験できるクラス、通訳対応のクラスもあり、有名フローリストのもとで本格的にレッスンを受けることも可能だ。
中にはフラワーアレンジメントの本場フランスでフローリストの資格を取るという夢を叶える日本人もいる。フランス国立園芸協会(SNHF)が主催するフランス、ベルギー、イタリアで共通のDAFAというフラワーアレンジメント資格試験などは、多くの人が10年くらいかけて資格を取るという。日本人でもフランスで毎年複数のフローリストからレッスンを受けて腕を磨く人もいるそうだ。
フラワーアレンジメントなら、老いも若きもいつでも始められるのがいい。これからは、パリジャンのような感性で、日本人男性だって花をアレンジしたっておかしくない。本格的なプロを目指さないまでも、フランスの地方に広がる花畑や花咲く村、美しい公園を巡るなど、花を通してヨーロッパを旅しながら、フラワーアレンジメントやガーデニング、フランスの自然を深く知る旅があっても面白そうだ。
結局、最後は心を込めた花束を贈る方が、ずっと人を幸せにすることができるはずだから。
印象派クロード・モネの「モンソー公園」
フランス花を贈る文化の人々 -パリジャンのようにフラワーアレンジメントする-
2018-04-16